岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
岩渕健輔が語るラグビーW杯と7人制。
世界と戦う「地力」こそが次の目標。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byAFLO
posted2015/11/28 10:50
リオ五輪で行われる7人制ラグビーは、女子のラグビー競技としては五輪初の開催となる。
トップリーグに世界と戦うだけの地力を。
しかし、いつまでも後ろを向いているわけにはいきません。すでに日本大会に向けてのカウントダウンは始まっていますし、今必要なのは予選プールで3勝を挙げたという事実から導きだされる収穫と、決勝トーナメントに進出できなかったという苦い経験からもたらされた教訓を踏まえて、前に向けて再び歩みだすことです。
まず収穫の中身としては、自分たちが掲げたビジョンと、代表強化の戦略・計画が間違っていなかったという確信を得られたことがが挙げられます。これは2019年に向けて、日本ラグビー界全体で受け継いでいくべき資産でしょう。逆に教訓として浮かび上がるのは、日本ラグビー全体としては、まだまだ地力がついているわけではないという点です。
イングランド大会でベスト8やベスト4に残ったのは、いずれも地力に優る強豪国でした。これらのチームを根底で支えるのは、分厚い選手層であり、レベルの高い国内リーグの存在です。対照的に日本が3勝を挙げることができたのは、エディー・ジョーンズをヘッドコーチに据え、少数精鋭の選手を徹底的に鍛え上げる、「タスクフォース型」の代表強化の産物でした。言葉を変えれば、南アフリカ相手に歴史的な勝利を飾った瞬間でさえ、日本のトップリーグと世界のラグビーとの差は、開いたままだったのです。
エディーの後任、海外挑戦、そしてビジネスモデル。
このような視点に立つと、私たちが4年後に向けてなすべきことは、自ずと明らかになってきます。
もちろんエディー・ジョーンズの後任となるヘッドコーチの選定、「ジャパン・ウェイ」をさらに進化させた新たな方法論の確立、選手のさらなる育成、強豪国とのテストマッチを増やしていくための、交渉力の確保など課題は数えきれないほどあります。
しかし突き詰めて考えると、私たちにとっての最大の課題は、やはりトップリーグのレベルを、いかに世界に近づけていくかに尽きると言えます。国内リーグの底上げこそは、代表チームの基盤になるからです。
ならば、いかにしてトップリーグのレベルを底上げするか。
海外のリーグに挑戦する選手の数を増やしていくことも大切ですし、来年2月から始まるスーパーラグビーを通じて、「サステイナビリティー」(継続的な代表強化の枠組み作り)と、「プロフィッタビリティー」(日本ラグビー界全体の振興に寄与できる、新たなビジネスモデル)を確立する作業も、きわめて重要になります。
しかし、より身近なところから確実に取り組める方法もあります。それはイングランド大会に参戦した選手やスタッフたちが、W杯という「非日常」的な舞台で得た糧を、トップリーグという「日常」の中できちんと体現していくことです。