岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
岩渕健輔が語るラグビーW杯と7人制。
世界と戦う「地力」こそが次の目標。
posted2015/11/28 10:50
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph by
AFLO
前回は7人制の楽しみ方を、歴史的背景や選手に求められる能力、そして7人制独自の戦術という観点から語ってきましたが、今回は具体論、日本の男女の7人制について話したいと思います。
私はW杯イングランド大会の期間中から、度々日本に戻り、男女7人制強化のサポートをしていました。日本ラグビーの今後のためには、男子15人制代表のW杯での結果だけでなく、男女7人制代表の五輪出場が必須と考えていたからです。その意味では、男子の7人制代表が香港大会でリオ五輪への出場権を確保したことで、なんとか第2段階をクリアできたと思っています。
男子7人制代表の香港大会のパフォーマンスですが、7人制の試合は15人制の試合よりも点が多く入りやすい傾向があるので、準決勝まで無失点を維持したのは前向きな材料でした。
決勝の香港戦は、前半は相手に完全にペースを握られ、2トライを奪われる展開となりました。いかに守勢に回っていたかは、前半、相手のエリアにほとんど入ることさえできなかったことからも明らかです。
7人制は15人制よりも展開がはるかにトリッキー。
ただし見方を変えれば、日本代表は苦しい戦いを余儀なくされたにもかかわらず、さらなる失点を防ぐ粘り強い守備ができていました。これはメンタル面での充実によるもので、後半の逆転劇につながっていきます。
決勝戦は前後半が10分ずつとは言え、後半が始まった時点でのスコアは0-10。攻撃を仕掛けてトライを奪わなければならないと頭ではわかっていても、ターンオーバー(カウンター)から追加点を与えたりすれば、リオ五輪への道はもっと遠のいてしまいます。しかも時間は着々と過ぎていきますし、香港は時間稼ぎも仕掛けてきました。
私自身、後半に最初のトライを奪うまでは、本当に気が気ではありませんでした。W杯の南ア戦の場合は、最初の10分間の戦いぶりを見た時点で、「これはいける」と確信できました。自分たちのゲームプラン通りの戦い方ができていたからです。
しかし先にも述べたように、7人制の試合は15人制の試合よりもはるかに展開がトリッキーですので、確信を得られる状態にはなかなかなれません。そのような状況の中でも決して焦らずに、勇気を持って積極的にボールを動かしながら試合の流れを引き戻していったのは、チーム全体としても、選手個々のレベルにおいても、精神的な成長を実感させました。であればこそ、リオ五輪への切符を手にできたときの喜びはひとしおでした。