野球善哉BACK NUMBER
秋季キャンプは何のためにあるか。
秋山、筒香の躍進で考えるその意義。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/11/15 10:30
イチローの記録を超えるシーズン216本のヒットは、稀少さでいえばトリプルスリーを上回る偉業だ。
サボりは防げても、新種の選手は出ないのでは。
決断してからの日々は、周囲からの筒香を批判する声と自身の手ごたえは相反するものだったが、「新しいものを手に入れるためには、そう簡単にできるものじゃないと思っていた」と筒香は地道に作り上げてきたのだった。
それが5年目のブレーク、そして、6年目の安定感へとつながったのだった。
もっとも、秋山や筒香がオフ期を最大限に生かしたから、秋季練習やキャンプを廃止するべきだというつもりはない。秋季キャンプへの参加が契機になり、躍進を遂げた選手がいるし、学生野球の影響からか、「やらされる」ことに慣れ切った選手が多くいるため、オフに入る前に課題を作る意味でも、多少なりとも意義はあるだろう。
ただ、無機質に参加しているメンバーがほとんど同じような練習を繰り返しているだけでは、同じ“花”しか咲かないのではないだろうか。サボる選手、落ちていく選手は防げるかもしれないが、突き抜けた選手、それこそ、今まで見たことのないような新種の“花”を咲かせようとするならば、個人の時間、いわば、リセットする勇気を持つ時間を与えることも一つの案として考えられなくはないか。
「当たり前」から一歩出てみる。
今季も12球団が足並みをそろえるかのように、秋季キャンプを実施している。
早々に打ち上げた日本ハムにしたたかさを感じる部分もあるが、「当たり前」とされているところから一歩出ることによって、何かが生まれるかもしれない。
今季の秋山が活躍することを予想はできても、プロ野球新記録を達成することまでを想像できた人物はいないだろう。ややもすると、トリプルスリーを達成した山田哲人と柳田悠岐の活躍よりも、多くが想定外の大記録達成に思ったに違いない。
その裏には、彼がリセットできたことがあった。
打撃フォームをイチから作り直すことができたことが、一つの要因だということを忘れてはならない。