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新監督と名伯楽の指導が飛び交う!
巨人、貧打解消へのキャンプイン。
posted2015/11/14 10:40
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
巨人のキャンプ地の宮崎県総合運動公園には高橋由伸新監督の“聖地”とでもいうべき場所がある。メイン球場から少し離れたブルペンの横に建つ大規模木造ドーム「木の花ドーム」である。
現役時代の高橋監督は通常練習が終わると、ここで打ち込みを行うのが日課だった。1日1000回を越すスイングを支えた場所。それがこの木の花ドームなのである。
その木の花ドームに足を踏み入れたのは11月7日の新生巨人の秋季キャンプ初日だった。
3つある打撃ケージでは大田泰示外野手と小林誠司捕手、橋本到外野手が熱心にボールを打っていた。投手を向いて、向かって左端にはカーブマシンが据えられ、マシンにほぼ正対した形で橋本がマシンから送られる110キロ前後のカーブを打っていた。
現役時代の中日・落合博満GMが取り入れていた“正面打ち”の練習だった。
一人のコーチがチームのムードを変えることがある。
そのバッティングを見ながら熱心に橋本に指導していたのが、高橋監督の下で新たに一軍の打撃コーチに就任した内田順三コーチだった。
落合はこの練習を、いわゆるインコースの捌きを習得するために行っていた。バットが外回りするとボールを捉えるポイントが1つしかなくなり空振りする確率が増える。しかし、バットのヘッドを立てて内側から出せれば捉えることができる。そのスイング軌道をつかませるための練習だった。
「選手は恐怖心もあるだろうけど、きちっとハンドリングできてバットが内側から出せれば決して難しいことではない」
こう語る内田コーチはケージの脇に立っては、身振り手振りを交えて橋本にバットの出し方を指導する。その言葉を真剣な眼差しで聞いていた橋本が頷くと、再びマシンに正対してボールを打ち出した。
一人のコーチの存在で、チーム全体のムードが変わることがある。
内田コーチは1994年から9年間と'06年から2年間、巨人で打撃コーチを務めた。その後、出身の広島で一軍打撃コーチなどを務めた後に、昨年3度目の巨人復帰を果たした名伯楽である。かつてのコーチ時代には高橋新監督をはじめ、阿部慎之助内野手なども“門下生”だった。