手術でバットを振れなかった時期の効果。

　では、なぜ、秋山にはそれができたのか。

　これが、「オフに野球ができない」という怪我の功名が起因となっていたのである。

　秋山はいう。

「練習しながらフォームを変えようとすると、どうしても、いい時のフォーム、結果が出ていた時のフォームに戻したくなっちゃうんです。新しいことに取り組む最中でも、戻してしまう。でも、僕の場合は手術の後、バットを振れない時期が2、3カ月あったので、そこで一度、以前のバットの振り方、去年の打ち方を忘れられたのが大きかったと思います。映像を見なきゃ忘れるくらい以前のフォームが消えていたので、思い切って変えるにはいいタイミングだったんです」

　秋に練習をしない方が良いと言っているわけではない。

　時には、選手が大きなステップを踏むとき、何かを変えないといけない時期には、キャンプに参加して、隣から小まめにアドバイスを受けるよりも、一旦、自分をリセットする時間というものが必要なのではないかということだ。

　リセットする勇気、そして、それを許す時間。

　選手の育成を考える上で、その環境を作ることも必要なのかもしれない。

身体を「リセット」する筒香嘉智。

「リセット」するという意味で、忘れられないプレイヤーがもう一人いる。

　現在、秋山とともにプレミア12に参加しているDeNAの主砲・筒香嘉智である。

　筒香のオフは実に計画的だ。

　今年のように侍ジャパンの活動がある時はまた別になるだろうが、通常、シーズンがオフになると、1週間～2週間ほど身体のメンテナンスに入る。休暇の意味も含まれるが、どちらかというと、1年間働いた身体を一度リセットし、次のシーズンに入っていく準備をするのである。

　そして、その期間が終わると、ロサンゼルスにあるトレーニング施設に向かう。そこでどのような練習をしているかは過去の野球善哉コラムや本誌の特集で取り上げられているので割愛するが、そもそも、筒香がアメリカに渡るようになったのは、それまでの自分をリセットするためだった。以前、筒香がこんな話をしている。

「2年目のオフにアメリカに初めて行ったんですけど、その時に取り組んだ練習がすごくよかった。これを続けていけば、自分のバッティングがモノになるんじゃないかと思えたんです。それはそれまでのバッティングを変えることになるんですけど、実際、自分の中では、当時のバッティングフォームでは一時的には打てても、将来は行き詰まる時がくると感じていたので、それを変えようと決断しました」

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