野球善哉BACK NUMBER
秋季キャンプは何のためにあるか。
秋山、筒香の躍進で考えるその意義。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/11/15 10:30
イチローの記録を超えるシーズン216本のヒットは、稀少さでいえばトリプルスリーを上回る偉業だ。
広角打法を手に入れるための「視点」。
今季の秋山が大きく変わった点の一つが、バッティングフォームの改造である。
昨季までの秋山はミートポイントを前目に置いていたが、これをやや捕手よりに置いた。右手に加えて左手も使えるようにしただけでなく、構えるバットの位置も高いところから、寝かせるように低い位置に設定した。
このフォームに改造したのには、明らかな意図があった。
「成績を残している人たちは逆方向に打てるということに行きつきました。広角打法というより、逆方向にきれいに強い打球を打てる。センターを守っていてそれを感じていたんですけど、それで逆方向に打って行くという意識が自分には必要だと感じたんです。逆方向に打つためにはどうすればいいか考えたんです」
「逆方向の打球を打つこと」を意識する中で、まず必要なことは何か。フォームから入るのか、ステップから入るのか、タイミングなのか、ボールの見方なのかを熟考した結果、「僕は、ボールの内側、右側を見るというのを心がけました」と秋山は言う。
ボールの右側を打つためのアプローチがあったうえでの、新しいフォームの習得になったというわけだ。
フォームが極端に変わった秋山。
とはいえ、ここで注目しなければいけないのが、フォーム改造過程における秋山の決断である。
打者にしても投手にしても、フォームというのは非常にデリケートな要素を持っている。日一日で変えられるものではない。どうしても、長く染みついたフォームに愛着があり、それが忘れられなくなる。変えようと頭では思っていても、つい戻してしまうのである。
しかし秋山に関しては、その変わりようは極端すぎるくらいに違っていた。トップの位置は低くなったし、スイングもややアッパースイング気味である。以前までの上から叩きつけるフォームは、ボールにスピンを掛けて長打を狙うという意図もあったから、そこも損なわれてしまうのである。