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名波監督への依存から選手の自立へ。
2015年のジュビロは、秋も強い!?
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/11/08 08:00
ジェイとともに磐田の攻撃を牽引するアダイウトン。16得点で得点ランクも2位タイに上がってきた。
名波「“前体重”がすべてだった」
名波監督が振り返る。
「(一人少ない)我々とすれば、一人が本来は10メートルをカバーしなければいけない守備エリアが、15メートル、もしかしたら18メートルと広がってしまい、非常に苦しい状況だった。しかし“前体重”というものがすべてだったと思います。自分の前にいる選手に対し、常にボールアプローチ、ピックアップしに行くということで、相手の速い攻撃や考えるスピードを極端に遅らせることができた。そして、ボールを奪ってからの分散の仕方も、選手数は少数でしたが、非常に効果的だった。それがゴールにつながった部分もあったと思います。
10人だろうが9人だろうが、とにかくシュートに持っていかないと勝ち点は取れない。そこで常に前がかりで、ということをハーフタイムに伝えた。アダイウトンには、(守備を)さぼりながら、前に出ていくタイミングをうかがって欲しいとずっと伝えていました」
後半6本のシュートで3得点。アダイウトンの能力の高さが光ったが、選手それぞれの執念、勝ち点に対する執着心が伝わってきた。ゲームが途切れるたびに周囲の選手に声をかける小林は、チャンスメイクを意識しながらも、バランスへの気配りも忘れなかった。
「(上田)康太くんと(川辺)駿が前に出過ぎると、中を空けてしまうと感じたので。そこをあまり前に出させないようにしながら外でためること、無理に攻めないことを意識していた」
10代のころから将来を嘱望されてきたレフティが、泥臭く勝ち点にこだわった。彼もまた一時期、スタメンを外され、奮起を促された一人だ。
取り戻しつつあるかつての磐田の姿。
確かに外国人選手の能力は高い。
会見では、「個人能力に頼った得点シーンは名波さんのスタイルじゃないんじゃないか?」というような趣旨の質問も出たが、監督は「僕が好きなのは2点目」と答えた。アダイウトンの破壊力のあるドリブルが印象的な得点シーンだが、前への強い意識によって、速い展開でボールを運べたことが大きい。
前線からのプレスをかける “前体重”、奪ってからの速い攻撃、攻撃のための守備は、かつての磐田の姿だ。高い技術力と戦術眼で “華麗”と呼ばれた磐田サッカーの土台はここにある。