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名波監督への依存から選手の自立へ。
2015年のジュビロは、秋も強い!?
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/11/08 08:00
ジェイとともに磐田の攻撃を牽引するアダイウトン。16得点で得点ランクも2位タイに上がってきた。
救世主扱いだった名波監督就任。
ゴールが決まるたび、スコアラーがゴール裏を埋めたジュビロサポーターの元へ走り出す。アップ中の選手もその輪に加わった。
「あのダッシュが結構なアップになった」と、この日は出番のなかった松井大輔が笑った。「とにかくJ1昇格してくれればいい」という言葉も、昨シーズンに比べると自信に溢れている。出場機会が減り、個人的には悔しい想いもあるに違いない。それでも、たくましく成長したチームの姿、勝ち点を積み上げているという日々は、「昇格のために」と、加入した男にとって、ある種の手ごたえも感じているはずだ。
1年でのJ1復帰を誓い挑んだ2014年シーズン。守備を固める相手に対して苦戦した。9月になってやっと指揮官が交代。新監督に就任したのはクラブのレジェンドの一人、名波浩だった。監督経験はおろか、Jリーグでのコーチ経験もない。それでも誰もが「名波に任せれば大丈夫」と信じた。待望の救世主登場に期待したのは、クラブ首脳陣、OB、サポーターだけではなかった。選手自身もまた、新指揮官が現状を変えてくれると考えていたのかもしれない。変わるべきは自分自身だとわかっていても、“変えてくれる”という想いを抱いたのだろう。
先輩と監督では、選手との距離感も変わる。
しかし、走り出したバスはそのドライバーの手腕だけで、現状が変わるものではない。エンジンがパワーアップしなければ、変化は乏しく、成長も遂げられない。
頼りになる先輩から、頼りになる監督と立場が変われば、選手との関係、距離感、コミュニケーションにも違いが求められる。名波監督自身もそれを自覚していただろうし、だからこそ、選手に対してもデリケートな配慮が必要だったはずだ。監督、選手双方の試行錯誤は確かにあった。
2勝5分2敗と振るわない成績でシーズンを終え、昇格プレーオフ敗退という苦悩が助走となり、今季は真のリスタートを切ることができたと感じている。
残り3試合。磐田は3位以上が確定しているが、2位と3位とでは大きな違いがある。
「(福岡の勝利を受けての試合で)こういったゲームができたということは昨年にはなかったなと。それが力になっていますし、自分たちが悔しい、苦しい思いをしてきたその反動というものが勝ち点3への執着心につながっていると思います」と監督が語り、伊野波雅彦も「俺らは上しか見ていないから。下のことは気にならない」と言い切った。