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新体操、個人枠でついにリオ五輪へ。
苦節11年、過酷な時代を振り返る。
posted2015/09/16 10:30
text by
椎名桂子Keiko Shiina
photograph by
AFLO
9月7日から13日にかけてドイツ・シュツットガルトで行われた第34回世界新体操選手権は、日本にとっては記念すべき大会となった。
まず、個人競技に出場した皆川夏穂(イオン)が個人総合で15位となり、2016年に開催されるリオ五輪の出場枠「1」を獲得した。個人による五輪出場は実に3大会ぶりのこと。「えっ? 新体操っていつも五輪に出ているじゃない」と思う人も多いかと思うが、それは団体競技(5人で演技を行う競技)の方だ。
日本人選手が五輪の個人競技に出場したのは2004年アテネ大会の村田由香里が最後で、その後は、出場権を逃し続けていたのだ。
皆川夏穂は素晴らしい選手だが、この11年間、日本に良い選手がいなかったのかといえば、そうではない。しかし長い間、日本の強化策は「団体中心」となっており、個人に関しては各選手の所属クラブまかせでやってきたという事実もある。個人選手は国際試合への派遣もほとんどされず、いくら全日本チャンピオンになっても国際的には知名度のないまま世界選手権に出向き、結果も残せず帰国するだけという時代が続いていたのだ。
2012年ロンドン五輪後、ついに日本は「個人強化」に手をつける。
そして打ち出した強化策が、“新体操大国・ロシア”に選手を派遣して、ロシアの指導のもとで強化を行うというものだった。
国際舞台で評価を受ける方法とは?
当時、特別強化選手だった皆川夏穂と早川さくら(イオン)がその対象に選ばれ、2013年3月に2人はロシアに渡る。それからの2年半、2人はロシアのナショナルチームの練習場で世界のトップ選手たちとともに練習し続けてきた。それぞれに専属のロシア人コーチもつき、ワールドカップを転戦し、2013年からは国内での選考試合の免除までして世界選手権に出場させてきた。
その強化策は、徐々にだが成果を出し始める。皆川の世界選手権での成績だけを見ても、2013年36位、2014年23位と急上昇していた。今シーズンは、皆川がワールドカップのポルトガル大会で個人総合8位と初の入賞も果たし、海外の審判やファンにも「MINAGAWA Kaho」の名前、そして「HAYAKAWA Sakura」が共に浸透していきつつあった。
ロシアでの指導を受けたことで技量、技術、表現力などが向上したことは間違いない。皆川の演技は、この2年半でどんどん難易度が上がっていたし、海外の選手にも劣らない迫力まで出てきていた。しかし、新体操では後進国と思われている日本の選手が、国際舞台で高評価を得るためには、ただ「うまくなる」だけではダメなのだ。
そこに、採点競技の難しさがある。