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最後の直線とタイブレイカー。
~MLB終盤戦、混戦の地区優勝争い~
posted2015/09/12 10:30
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
タイブレークといったほうが馴染み深いかもしれないが、大リーグでは通常「タイブレイカー」と呼びならわす。大まかにいうと、レギュラーシーズンでの勝敗数がまったくひとしいチーム同士の一本勝負。地区王者を決める際も、ワイルドカードを決める際も、このフォーマットが採用される。ここでも、落ち着きがよいので、タイブレイカーという呼び名に従う。
あえてお断りしたのは、2015年シーズンもタイブレイカーの見られる可能性がかなり出てきたからだ。地区優勝のチームが3つとワイルドカードが2枚。ポストシーズンに進出できるのは、各リーグ5球団だけだが、優勝して出るのとワイルドカードで出るのとでは、話がだいぶ変わってくる。できることなら地区優勝で、それもなるべく高い勝率でポストシーズンを迎えたいと思うのは、その後の条件を考慮すると、まあ当然のことだろう。最近では、'07~'09年(3年連続1点差ゲーム)と'13年にタイブレイカーがあった。'07年のロッキーズ(延長戦のタイブレイカーでパドレスを9-8で破った)などは、余勢を駆ってワールドシリーズにまで進出している(最後は敗れたが)。
ブルージェイズとヤンキースが僅差の勝負。
今季、タイブレイカーが見られそうなのは、地区優勝をめぐる戦いだ。具体的にいうと、ア・リーグ東地区のブルージェイズ対ヤンキース、ア・リーグ西地区のアストロズ対レンジャーズ、もうひとつ、わずかに可能性が遺されているのが、ナ・リーグ東地区のメッツ対ナショナルズ。
ア・リーグ東地区では、両チームが僅差の競り合いをつづけている。9月7日現在、ブルージェイズが78勝59敗で、ヤンキースが77勝59敗。残り25~26試合でどちらかが大きく抜け出す(もしくはメルトダウンする)可能性もあるが、両者の戦力を勘案すると、最後の最後までもつれる可能性が高い。
ブルージェイズは、デヴィッド・プライスをタイガースから獲得して、課題の投手力が飛躍的に向上した。彼が来る前の先発陣は、マーク・バーリー、R・A・ディッキー、マルコ・エストラーダ、ドゥルー・ハッチソン。平均年齢も高く、失礼ながら地区優勝を争える陣容とは思えなかった。
ところが、サイ・ヤング賞投手が1枚加わったことで、中身が一変した。移籍後のプライスは7戦に先発して、5勝1敗、防御率=2.15。加入後わずか1カ月でチームの大黒柱になったのはさすがの実力というべきだろう。
打線の中軸は、これまた今季新加入のジョシュ・ドナルドソンだ。マイク・トラウト(エンジェルス)が急激なスランプに襲われたこともあって、現在のドナルドソンはア・リーグMVPの最有力候補だ。打率=3割6厘/出塁率=3割7分2厘/長打率=5割9分1厘、本塁打=37本、打点=115の成績は、非の打ちどころがない。