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最後の直線とタイブレイカー。
~MLB終盤戦、混戦の地区優勝争い~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2015/09/12 10:30
8日のオリオールズ戦、ヤンキースは先発の田中将大が8回1失点の好投も、1-2で敗れる。首位を争うブルージェイズとの直接対決は残り7試合。優勝するのはどちらか?
ヤンキースはブルペンが大車輪。
一方のヤンキースには際立った選手はいない。田中将大やネイサン・イオヴァルディを軸とする先発陣は特別な輝きを見せているわけではないし、打線も、マーク・テシェイラ、アレックス・ロドリゲス、ブライアン・マッキャンらが「昔の名前」で働いている印象が強い。健闘の原動力は、むしろブルペンだろう。デリン・ベタンセス、チェイスン・シュリーヴ、アンドルー・ミラーは、そろって50試合以上に登板し、1点台の防御率をキープしている。彼らの存在抜きに、ヤンキースの善戦は考えられない。
今季の両者は、直接対決を12回戦っている。いまのところはブルージェイズの8勝4敗だが、シーズン終盤に直接対決があと7試合もある。他の対戦相手を見ると、ブルージェイズが苦手レイズ(今季5勝8敗)との対戦を6試合残しているのが気になる。それ以外は両者とも無難に乗り切るはずだから、優劣の行方はやはり直接対決に絞られるだろう。
「メルトダウンの常連」メッツは……?
両チームの競り合いに気を取られて、他の地区の分析をする紙幅がなくなってしまった。追い上げ急のレンジャーズは、アストロズとの直接対決(今季8勝4敗)を7戦残していることに希望をつなぐが、苦手エンジェルス(今季5勝10敗)との最終4連戦が問題だ。ここで圏外に去るか、それとも逆転もしくはタイブレイカーに持ち込めるか。成否の分かれ目はこのあたりにある。
さて、どうしても触れておきたいのは「メルトダウンの常連」メッツの動向だ。9月7日現在、2位ナショナルズとのゲーム差は5。普通なら安全圏に近いが、なにしろメッツには「2007年の悪夢」という過去がある。あの年、145試合を経過した時点で2位に7ゲーム差の首位を守っていたメッツは、残り17試合で5勝12敗という大不振に陥り、フィリーズに逆転地区優勝を許してしまったのだ。しかもご丁寧なことに、メッツは翌08年も最終17戦で7勝10敗と負け越し、地区首位をふたたびフィリーズに譲り渡すという憂き目に遭っている。
今季はどうだろうか。メッツの残り試合の日程を見ると、超苦手のパイレーツ(0勝6敗)やカブス(0勝7敗)との対戦はすでに終わっている。ナショナルズ(8勝6敗)との直接対決は5試合、カモのフィリーズ(14勝2敗)とは3試合、五分のブレーヴス(6勝6敗)とは7試合を残す。崩落の悪夢を免れるためには、案外、対ブレーヴス戦あたりが鍵になるかもしれない。