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育成力に勝るのは部活か、ユースか。
ドイツが出した答えは部活だった!? 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2015/09/10 10:50

育成力に勝るのは部活か、ユースか。ドイツが出した答えは部活だった!?<Number Web> photograph by Getty Images

ドイツ代表MFのメスト・エジルはトルコ移民の子としてゲルゼンキルヘンに生まれた。12歳のとき、シャルケのスタジアムの横にあるベルガー・フェルト校に入学し、本格的にサッカーを始めた。

練習と授業を両立させる「育成コーディネーター」

 筆者は2011年、エジルのルーツを探るNumber本誌の取材で同校を訪れたことがある。

 転機となったのは2000年、ドイツサッカー協会が育成改革を実施し、ドイツ中のクラブに近隣の学校と協力するように訴えたことだ。同校は元々シャルケと提携していたが、改革を機に、さらに連携を強めていく。

 たとえばサッカー選手を目指す子供たちは、週に3回、午前中の授業が2コマ免除され、その時間にサッカーの練習をするようになった。教えるのはシャルケの下部組織の監督やコーチたち。他にも授業で、体幹トレーニングの基礎知識やスポーツ生理学が教えられる。

 そして同校の最大の特徴は、「育成コーディネーター」が常駐していることだ。用務員のトーマス・バウアーがこう説明してくれた。

「私たちの学校には、サッカー選手が練習と授業を両立できるように時間割りを調整する育成コーディネーターがいる。彼らはドイツサッカー協会の免許を持つ育成の専門家で、遠征で授業が受けられないときは、補習の手配もする。サッカーと学業、両方に集中するために、彼らの存在が欠かせないんだ」

 学業とサッカーを両立させるために、先生と指導者が協力し、生徒にとって最適のプログラムを考える――。まさに日本の高校の部活で行われていることではないだろうか。さながら部活の顧問が、育成コーディネーターといった感じだろうか。

学校の認定制度は、2006年に始まった。

 ドイツはこういう成功例をさらに発展させるために、2006年、ドイツサッカー協会のスポーツディレクターに就任したマティアス・ザマーの呼びかけにより、「フットボール・エリートシューレ制度」を開始した。

 これは、クラブと組んで育成に力を入れている学校を、ドイツサッカー協会が「フットボール・エリートシューレ」に認定する制度だ。認定されると、資金的な援助を受けられる。「ベルガー・フェルト」は2007年に認定を受けた。

【次ページ】 日本でも、広島や京都が高校と連携している。

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