セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ローマのジェコ&ピアニッチが凄い!
欧州の移民問題に彼らは何を思う。
posted2015/09/09 10:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
もし、この世に“ユーゴスラビア”という国がまだあったなら――。
今季のセリエAには、54カ国の選手たちが集う。
そのうち、クロアチア、セルビア、スロベニア、モンテネグロ、マケドニア、そしてボスニア・ヘルツェゴビナの6カ国からは、リーグ最多とされるブラジルの40人を凌ぐ52人がプレーしている。旧ユーゴ出身者たちが、イタリアで一大勢力を築いているのだ。
2節での大一番、ローマ対ユベントスの勝負を決めたのは、ボスニア代表の主力であるMFピアニッチとFWジェコだった。
右足の魔術師ピアニッチが61分のFKで先制点を奪い、79分にFWジェコがへディング弾で勝負を決めた。
カンピオナートでの5度目の対戦で初めて王者ユーベを破った指揮官ガルシアは、「この勝利を意味あるものにするには、最後の最後まで気を抜かないことが重要だ」と気を引き締めながらも、抜群のボールコントロールで中盤を制したピアニッチと最前線から相手守備陣へファーストプレスをかけ続けたジェコの働きぶりをそれぞれ讃えることも忘れなかった。
ジェコ「いつ死んでもおかしくないと思っていた」
強靭なフィジカルと高度なテクニックを操るバルカン半島出身の男たちは、“欧州のブラジル人”と呼ばれる。
誰より高く跳び、誰より広い肩でユーベのDFたちを吹き飛ばしたローマの新加入FWエディン・ジェコは、'86年にサラエボで生まれた。
6歳になった'92年、ボスニアで内戦が勃発した。彼とその家族は、サラエボとその周辺地域を転々と逃げ回った。
「三食食えない日が何日もあった。銃声や爆弾が落ちる音を聞くたびに、身を隠して怯えていた。いつ死んでもおかしくない、といつでも思ってたよ」
17歳で地元のクラブからチェコの2部クラブへ移籍しFWに転向。ドイツとイングランドを経て、一流ストライカーへの階段を駆け上った。