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花咲徳栄が抱いた充実感と悔恨。
最後まで攻め続けた美しき敗者。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byHideki Sugiyama

posted2015/08/17 18:40

花咲徳栄が抱いた充実感と悔恨。最後まで攻め続けた美しき敗者。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

悔し泣きに崩れる花咲徳栄の選手。最後の最後まで諦めないその戦いぶりは、多くの人々の感動を呼んだはずだ。

「チームの目標はベストゲームをすること」

 先頭打者・小笠原の一塁ゴロをトンネル。続く1番・千野啓二郎の犠打は三塁前へと転がり、三塁手の楠本晃希から遊撃手・岡崎へとボールが渡って好機を摘み取ったかに見えたが、岡崎が間に合わないはずの一塁へ悪送球してしまう。結局、1死二塁のピンチを背負った。5回途中から登板していた高橋の好投で2死まではなんとかこぎつけたが、3番・杉崎成輝に左翼超えの適時二塁打を放たれ、試合は終わった。

 ベストゲームではあった。

 だから、指揮官の岩井は「チームの最終目的はベストゲームをすること。今日はそれができた」と満足そうだったし、大滝も「徳栄の野球を全部出せた」と涙も見せずに、充実感を漂わせた。

 しかし、あと一歩が届かず、悔しさに打ちひしがれた選手もいたのだ。

2年生が感じた悔しさは、きっと未来の糧になる。

 その1人が今大会No.1投手の小笠原と投げ合った、2年生左腕の高橋である。5回途中から登板し、4回3分の1を自責点1。小笠原と互角にわたり合ったが、「きょうの試合、自信にはなったけど、満足できたのは半分くらい」と消えそうな声で話し、試合をこう振り返った。

「自分は(小笠原選手の)1つ下の代で、東海大相模といい試合ができたことはいい経験になったと思います。小笠原さんのピッチングは、ピンチでも動じていなかった。自分とは違って大人のピッチングだなと思いました」

 充実感と悔しさと――。

 充実感を漂わせていたのは監督以下の3年生たち。一方で、2年生たちが抱いたのは、先輩達とは異なる悔しさだった。

 5回裏のピンチでは自己最速の145キロを計測した高橋。「甲子園の力があんなボールを投げさせてくれた」との言葉には、今大会の充実度を表している。だが、彼はこうも言葉をつなげた。

「これからは短いイニングではなく、長いイニングを投げ抜くことができて、なおかつ、勝てるピッチングができる投手になりたいです」

 東海大相模と互角にわたり合って生まれた、充実感と悔しさという2つの相反する感情。

 花咲徳栄にとって、大きな財産になったはずである。

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