野球善哉BACK NUMBER
花咲徳栄が抱いた充実感と悔恨。
最後まで攻め続けた美しき敗者。
posted2015/08/17 18:40
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
充実感と悔しさと――。
試合後の花咲徳栄ナインには2つの感情が入り混じっていた。
指揮官の岩井隆監督は言う。
「うちにとっては、望んでいた通りのゲームでした。これ以上にない試合ができたと思います。勝てばまだ試合が残っていたわけですが……これまでの中で1番のゲームができたんじゃないかと思います」
14年ぶりに夏の初戦を突破した花咲徳栄(埼玉)にとって、この日の対戦相手の東海大相模(神奈川)は、挑戦者として対戦するのには絶好の相手に違いなかった。門馬敬治監督と岩井は同い年で普段からの交流があり、現チームも1年ほど前に練習試合で相対してもいた。相手をリスペクトして、そこに挑んでいく――東海大相模はまさに理想的な強豪校であった。
花咲徳栄監督・岩井の思い通りに進んだ試合。
4番を打つ大滝愛斗が試合前にこう語っている。
「去年の練習試合で対戦して、小笠原(慎之介)は投げませんでしたけど、吉田(凌)とは対戦しました。すごい投手だなと。その試合では負けましたが、もう昔のことなんで。これまでやってきた練習の成果を発揮したい。吉田はスライダー、小笠原は得意としているストレートを狙っていきたい」
監督の岩井は、
「門馬は何をしてくるか分からない監督なので、先発が吉田君か小笠原君か決めずに臨みます。東海大相模は、これまでの戦いでは序盤の集中打で試合を決めてきている。いつの間にか点が入っているという試合をしているので、ウチは点を取られてもビッグイニングにしないようにしたい。攻撃面では、思い切って攻めていきたいですね。小笠原君が来ればストレートを積極的に狙いにいって、吉田君はストレートと縦のスライダーがありますので、そのどちらかに絞るつもりです。前半は変化球を多めにしてくるんじゃないかと見ています」
そして、試合は岩井の言葉通りに進む。