フットボール“新語録”BACK NUMBER
FC東京が敵地欧州で示したJの“質”。
高橋秀人「もっとまわせたと思うくらい」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2015/08/10 10:40
FC東京は前半に2点を先制したものの、徐々に本来の動きを取り戻したフランクフルトが追いつき、後半で逆転した。しかし敵地で得た経験は大きな財産になるはずだ。
フランクフルトの乾もFC東京のテンポに苦戦。
選手たちが持っている高い技術力をベースに、テンポ良くDFライン(左から徳永悠平、丸山祐市、吉本一謙、松田陸)がパスを配給し、ベストメンバーのフランクフルトを翻弄した。
フランクフルトの左MFとして先発した乾貴士は、試合後にこうもらした。
「取りどころが定まらなくて、追い込みにくかった。それによってゲームを支配されてしまった」
マインツやホッフェンハイムと比べると、元々フランクフルトはプレスが緩いチームだが、それを割り引いても、FC東京が見せたパスワークは圧巻だった。
高橋は格上の相手を翻弄できた理由をこう分析する。
「敏捷性という点で、日本人の方が上回っていました。だからポジションをしっかりと相手と相手の間に取れば、ボールをまわすことができた。むしろもっとまわせたと思うくらいです。個人的には相手のボランチの前で、もっとコンビネーションを出したかったですね」
トップ下・河野の加速に相手がついて来られない。
特に相手にとって厄介だったのは、168cmの河野と173cmの三田だ。リスクを負って1タッチ目から加速し、相手のボランチやDFを何度も置き去りにした。
高橋は続ける。
「河野のするするっと抜ける動きに、相手は対応できていなかった。まさに(乾)貴士がそうだと思うんですが、テクニカルでスピードがあって小刻みな動きをできる選手は、ドイツで活躍できると感じました」
FC東京は前半20分、CKの跳ね返りを前田が押し込んで先制に成功。さらに2分後、相手GKのパスを高い位置でカットし、バーンズが決めて2-0にリードを広げた。
ブンデスの上位チームであれば、選手の身体能力も上がるため、簡単にはパスをつなげなくなる。だが中位レベルの場合、全ポジションに足の速い選手がいるわけではない。その弱点に、FC東京の強みが見事にはまった。