フットボール“新語録”BACK NUMBER
FC東京が敵地欧州で示したJの“質”。
高橋秀人「もっとまわせたと思うくらい」
posted2015/08/10 10:40
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
AFLO
「敏捷性という点で、日本人の方が上回っていました。だからポジションをしっかりと相手と相手の間に取れば、ボールをまわすことができた。むしろもっとまわせたと思うくらいです」
高橋秀人(FC東京)
はるばるドイツまでやって来たFC東京の選手たちは、コンメルツバンク・アレナのロッカールームで気持ちをひとつにしていた。
「相手を本気にさせてやろうぜ」
折しも東アジアカップが中国で開催されており、FC東京は日本代表の森重真人、太田宏介、米本拓司、権田修一を欠いていた(権田は体調不良で同大会を辞退。ドイツ遠征にも帯同しなかった)。
だからこそ、逆に選手たちの士気は高まっていた。アンカーの高橋秀人はこう振り返る。
「相手の方が格上ですし、少なからず日本のクラブということで甘く見られていたと思うんです。だからみんなで『どれだけ早い段階で相手を本気にさせるか』をポイントにしていました。俺たちもやるんだぞ、というのを見せたかった」
敵地で、開幕から格上の相手をパスワークで圧倒。
8月2日、長谷部誠、乾貴士らが所属するアイントラハト・フランクフルト対FC東京の親善試合がフランクフルトで行われた。ドイツ側の主催者からの完全招待で、飛行機代や宿泊代はすべて先方持ちだ。当然、飛行機はビジネスである。強行日程となるが、こんな素晴らしい機会を逃す手はない。
そして高橋たちの計画通り、FC東京はキックオフから相手を圧倒する。そこで武器になったのが「パスワーク」だった。
FC東京のシステムは4-3-1-2。前田遼一とネイサン・バーンズが2トップを組んで相手のDFラインに圧力をかけ、トップ下で河野広貴が動き回り、左右のMFの橋本拳人と三田啓貴がさらにかき回す。そして高橋がアンカーの位置で全体をコントロールした。
FC東京と言えば、イタリア人のフィッカデンティ監督の戦術により、Jリーグでは堅守速攻のイメージが強いだろう。だが、この日は別人のようにパスを回した。