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ハリルは日本人FWを活かせるのか?
クラブでの役割と違う「真ん中勝負」。
posted2015/07/03 10:40
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Asami Enomoto
彼は一体、何を見ているのだろうか。
ヴァイッド・ハリルホジッチが、所属チームでのプレーぶりを見て選手を評価しているとしたらフォワードたちにあのようなプレーを要求することなどありえないはずだ。
しかし――。
逆に言えば、これは貴重な機会なのかもしれない。変わるためのチャンスなのだ、彼らが、そして私たちが。
ロシアW杯にむけたアジア2次予選の初戦で、日本はシンガポールで引き分けた。相手陣内に攻め込みながらいつまでもゴールを割れなかった試合展開は、昨年のブラジルW杯のギリシャ戦を想起させた。力の差がある相手との試合でリードを奪えないというのは、今年1月のアジアカップのUAE戦とも共通する。
ギリシャ、UAE、シンガポールと相手のレベルは段々と落ちてきたが、いずれも90分を終えた時点では同点。ロシアW杯の出場を悲観するわけではないが、どうしてもむなしい気持ちにはなる。しかも前の2試合は中立地での開催だったが、今回はホームでの試合。それなのに、点が獲れなかった。
シンガポール戦で日本は23本ものシュートを放った。現役時代に名ストライカーとしてフランスリーグ得点王などにも輝いたハリルホジッチ監督は、少しの驚きと戸惑いをにじませ、つばを飛ばさんばかりの興奮した様子でこうも話していた。
「私の人生で、19回のチャンスを作りながら点が入らなかったという経験はほとんどない」
クラブとは異なる役割を与えられた岡崎と大迫。
ただ、のど元に小骨がひっかかったようにスッキリしない事実がある。
シンガポール戦で先発した岡崎慎司にしても、後半途中に送り出されて岡崎と2トップを組んだ大迫勇也にしても、所属チームで活き活きとプレーしているときとは異なる役割を与えられ、異なる指示を送られているということだ。
ここで疑問がわく。国内外でプレーする日本人選手たちの映像を数多く見ていると豪語する指揮官は、いったい何を見ているのか。所属クラブでのプレーを評価して、日本代表に呼んでいるわけではない、と思えてくる。