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ハリルは日本人FWを活かせるのか?
クラブでの役割と違う「真ん中勝負」。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAsami Enomoto
posted2015/07/03 10:40
武器だったポストプレーに加え、サイドで起点になる動きにも磨きがかかっている大迫勇也。
優れたフォワードだったハリルは、フォワードに厳しい。
ハリルホジッチがフォワードの選手たちに窮屈な思いをさせているのは、彼がフォワードとしてヨーロッパで活躍したこととも無縁ではないだろう。
例えば、かつてヴォルフスブルクを率いてクラブに初めてリーグタイトルをもたらし、シャルケでもCL躍進の礎を築いたフェリックス・マガトは、自身がテクニシャンだったこともあり、テクニックのある選手に対しては非常に厳しかった。
彼は多くの場合、選手たちが技術を前面に押し出したプレーをすることを忌み嫌った。現役時代にテクニックに長けた選手だったからこそ、同じようなタイプに厳しく、こだわりを持って指導するのはよくあることだ。
「ストライカーならば、ペナルティエリアのなかで勝負しろ、そこに、フットボールの真実があるのだ!」
ハリルホジッチのそんなアドバイスも、ストライカーとしてゴールを重ねることでヨーロッパの激しい生存競争を勝ち抜いてきた自負からくるのだろう。
FW選手は窮屈かもしれないが、チャンスでもある。
そもそもハリルホジッチは、手元にいる選手を上手に活かしてチームを作り上げるタイプではなく、自らのやり方に選手をあてはめてチームを作るタイプだ。まして現在は、クラブチームとは違い選手選択に関して絶大な裁量権を持つ代表監督の座にある。代表でゴールを決められなければ、あっさり選手を切り捨てることもあるかもしれない。彼は一流の代表チームやトップクラブで仕事をしてきたタイプではないので、どうしてもそこには不安が残る。
しかし冒頭に書いたように、逆にこれはフォワードの選手たちにとって、チャンスでもあるのではないだろうか。
所属クラブで目覚ましい活躍をしているからといって、代表選手の座が安泰なわけではない。ただ彼は、ストライカーに最も必要とされる「ゴールをとる仕事」を口うるさく要求しているだけなのだ。そういうことであれば……彼らも、それは十分わかっているはずだ。