プロ野球亭日乗BACK NUMBER
キューバ選手とどう付き合うか――。
「青田買い+日本式育成」という活路。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/06/05 10:30
キューバ出身、メンドーサの魅力は190cmの長身から繰り出される速球だ。昨季は二軍で4試合に登板して防御率1.59。来日2年目の今季、21歳の右腕は一軍でも輝けるか。
日本式で育ち、キューバ代表にまで成長。
来日1年目のメンドーサも、10月には宮崎でのフェニックス・リーグにも参加して、強化練習等で徹底的に鍛え上げられている。キューバではほとんどやったことのない体幹トレーニングやランニングに音を上げることもあったが、それでも歯を食いしばって日本流についていった。
その結果としてメンドーサ自身も、巨人に入ったことが自分の投手としての進化につながったと認めるまでになった。
「日本に来て技術的に成長したのは、コントロールが良くなったことだと思う」
メンドーサの自己分析だった。
「日本では練習量が多いし、投げ込む球数もキューバに比べるとはるかに多い。そうやって投げていくうちに、だんだん制球力がついてきた」
一軍初登板のオリックス戦。2回を打者6人、無安打2三振のパーフェクトで抑えた内容は、かなりの将来性を感じさせるものだった。この日のストレートは最速149kmだったが、ファームでは155km近い球速を記録したこともある。時折交えたカーブにはブレーキがあり、チェンジアップの落差も大きい。
そしてこの日本での成長が、キューバ国内でも大きなステップアップへとつながった。
日本から帰国した昨年の11月に、メキシコで開催された中米・カリブ選手権にキューバ代表として出場。クローザーとして6イニングを投げて1勝1セーブを記録し、優勝に貢献した。今季は7月にカナダで行なわれる国際大会の代表選手として、1カ月間セペダとともにチームを離れることも決まっている。
メンドーサが今後も順調に実績を残して成功すれば、トップ選手ではなく無名選手を発掘して育てるという新しいキューバ選手の獲得方法の道が開ける。
育成選手なら、メジャーと金銭面でも差はない。
もちろん、もし国交正常化が実現して門戸が開放されれば、メジャーの球団もこういう若い選手たちにも触手を伸ばすだろう。ただメジャーの場合は、自チームの育成プログラムで完全に管理するシステムだけに、シーズン中の代表派遣など融通が利かないケースも考えられ、その点では日本が付け入るチャンスは十分にある。
また、何より育成対象の選手の獲得では、金銭面でも日米に大きな差はない。さらにメンドーサが成功して代表チームで重要な役割を担うようになれば、選手育成(特に投手の)への実績、キューバ野球連盟との信頼関係を築くことになり、それも日本にとっては有利な要素になるはずである。