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柔道の代表選考が公開された理由。
選び方の多様性、選ぶ側の責任は?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2015/04/12 11:00
左から女子代表の南條充寿監督、全柔連の山下泰裕副会長、男子代表の井上康生監督。伝統を守るイメージの強い柔道連盟の今回の措置は、確実に代表選考に一石を投じたと言える。
一発選考が多いアメリカ、人の意見を重視するロシア。
海外に目を向けても、柔道を例にとれば、強国のフランスは医者などの意見を参考にしたうえで、代表の強化にかかわるコーチの投票で決定されると教わったことがある。
スキー競技の種目では、例えばオリンピックならオリンピックシーズンのワールドカップの成績のみで決めるケースもあれば、前シーズンも含めて2シーズンを選考の基準に含むなど、国や種目によって異なる。
国ごとの傾向で言うと、アメリカが多くの競技で一発選考の形をとっている一方、ロシアは、柔道をはじめヘッドコーチなど責任者の意見を重視する傾向がある。
さまざまな選考の仕方があり、そして代表選考はいつも議論を呼んできた。
国内でも、最近ではマラソンの世界選手権代表選考で、女子の3人目の選手の選考をめぐる是非がクローズアップされた。
卓球では、今年の全日本選手権女子ダブルスで優勝した平野早矢香・石川佳純のペアが世界選手権代表から落選したことに対し、平野が所属するミキハウスから選考基準、過程をめぐる意見書が提出された。
いずれの場合も、代表選考の対象が一つではないなど、「検討」の余地があることから疑問が生まれ、そこに不透明さを漂わせることになった。
選手や指導者は「一発選考」に乗り気ではない?
とはいえ、国際大会での結果が最優先であるとするなら、代表選考を一大会のみに絞る、いわゆる「一発選考」のみが正解とも言い切れない。直近の成績から見て明らかに突出した選手が落選することもないわけではないからだ。
こうして代表選考での問題がニュースとなると、「一発選考がすっきりしていてよい」という声もたびたびテレビなどで聞かれるようになった。
では、選手や指導者は選考のあり方をどう捉えているか。公に意見を明らかにする人はあまりいないが、取材の場での会話からすれば、一発選考に肯定的な人が多数とは言い切れない。
念のために記すと、競泳の場合、現場では「派遣標準記録もレベルが高いし選考基準は厳しい」と言いつつ、今の選考の方法について肯定的な声の方が多いように感じられる。また、オリンピックや世界選手権など国際大会で成果をあげてきたのも事実だ。