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柔道の代表選考が公開された理由。
選び方の多様性、選ぶ側の責任は?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2015/04/12 11:00
左から女子代表の南條充寿監督、全柔連の山下泰裕副会長、男子代表の井上康生監督。伝統を守るイメージの強い柔道連盟の今回の措置は、確実に代表選考に一石を投じたと言える。
4月4日と5日、福岡国際センターで柔道の全日本選抜体重別選手権が行なわれた。
今年8月にカザフスタン・アスタナで開催される世界選手権の、日本代表選考を兼ねた大会だ。
大会後、男子6名、女子7名の代表が発表された(男子100kg超級、女子78kg超級および男子のもう1人は後日の対象大会を経て発表される)。
女子では48kg級で浅見八瑠奈が2年ぶりに、52kg級で中村美里が4年ぶりに代表に選ばれ、男子は60kg級で志々目徹、90kg級でベイカー茉秋らが初めて選ばれるなどしたが、それとともに注目を集めたのは、代表選考を行う強化委員会の一部を公開したことだった。
柔道は代表選手選考の際に、国際大会の成績や国内ランキングなども含めて選手が選ばれる。そのため、選考は会議の場に委ねられることになる。従来は議論を経て決定したあと、記者会見が開かれて発表される形式だった。
今回は、その議論の場を公開したのである。これは史上初めてのことだ。
強化委員会では、コーチ会議でまとめられた代表選手の案が提示される。男子は井上康生氏、女子は南條充寿氏とそれぞれの代表監督がその理由を説明し、その案をもとに強化委員の間で話し合いが進められ、最終的にはコーチ会議案のとおりに決定して終わった。
代表選考を巡って次々と起こった「騒動」。
今回の形式を考えたのは、全日本柔道連盟副会長であり、強化委員長を務める山下泰裕氏である。
会議のオープン化を図ったのは選考の透明化を進める意図からだが、そこには、最近のスポーツ界での代表選考をめぐるいくつかのできごとも関係している。
代表選考のあり方は、競技によって異なる。
例えば競泳は、4月7日に開幕した日本選手権の結果で世界水泳の代表選手が決まる。この大会で2位以内に入ったうえで、事前に定められた派遣標準記録を切らなければならない。
また、陸上のマラソンでは、選考対象に指定された複数の大会の結果を受けて選手が選ばれる。
チーム競技であれば、代表監督などしかるべき立場にいる人の選考に委ねられることがほとんどだ。