スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
スプリットか、ツーシームかの分岐点。
開幕炎上の田中将大は変身できるか。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2015/04/07 11:25
メジャー2年目、肘の故障から復活を印象付けたかった田中将大だが、開幕戦では敗戦投手となった。黒田博樹が移籍したヤンキースで、田中にかかる期待と負担は大きくなる。
中断後のふわりとした空気を見透かされた田中。
レイエスが足首を痛めたため、少し確認の時間が取られた後にゲームが再開。2番のマーティンは、初球を狙いすましてライト前ヒットで二者生還。
マーティンは捕手。ゲーム中断の後、ふわりとした空気を見透かしたかのように初球に狙いを定めていた。外角の甘いコースに投げた田中にとっては悔やまれる1球となり、3-0。
その後田中は一死を奪うが(バティスタに対しても甘い球があり、ヒヤリとした)、4番のエンカルナシオンに真ん中に入るツーシームをレフトスタンドに運ばれ、とどめを刺された。
5-0。
田中は4回は0点に抑え、82球を投げたところで降板。その内容は、
4回
安打 5
自責点 4
三振 6
四球 2
という開幕戦となった。
「田中はジャンクボーラーになり切れなかった」
初回、2回と、無難というよりも期待を上回る上々の滑り出しを見せただけに、3回の「乱調」が悔やまれる。
この回、田中の球は魅入られたように真ん中へと入っていった。特に2015年の鍵となるツーシームは、ホームベースの外側から内へと入ってきていた。そのせいか、4回にはスプリットを多く使った印象もある。
ニューヨークのある記者は、「ジャンクボーラー(スピードを抑え、制球力で打ち取るタイプの投手のこと)への転身はうまく果たせなかった」とツイッターで指摘した。
ジャンクボーラー。たしかにうまい表現だ。私から見ると、田中はジャンクボーラーにはなり切れなかった。ツーシームの制球力の甘さを、強打のブルージェイズ打線は見逃さなかった。
やはり、頼りになるのはスプリットという印象だ。
次の登板、田中の投球を支える球種は何か。ツーシームか、スプリットか。
次回は開幕戦以上に、クオリティ・スタートという結果が求められることになる。