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<バンディエラ対談・完全版> 小笠原満男×柳沢敦 「鹿島イズムとは、何だ」
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byDaisaku Nishimiya
posted2015/04/03 11:00
言葉ではなく「背中で教える」のが鹿島の文化。
――「勝利へのこだわり」という部分でも、日本とイタリアで違いはありましたか。
柳沢 日本でも、みんなこだわりは持っているんですけどね。ただ、やっぱり日本人とイタリア人の違いはあるし、サッカーを見る目の厳しさとか、サッカーに関する文化の違いもあります。メディアにしてもサポーターにしても、サッカーに対する思いや考え方は違いますから。どっちのほうが良いとか悪いとかは言えませんけど、厳しさというのは確かに感じました。
――イタリアで感じたものを、日本に戻ったときに伝えようとしたことはありますか。
柳沢 俺は……ないな。
小笠原 俺も、ないな。百聞は一見にしかずで、ベラベラ話したからといって、それを聞いた選手が「はい、わかりました」ってなるもんじゃないので。もし聞かれれば答えるけど、改めて「こうだった」とは言わないですよ。
――確かに、言葉ではなく「背中で教える」のが鹿島の文化のような気がします。
小笠原 俺は上の世代の人に、そういうのを感じてきましたから。フランスW杯の頃から、本田(泰人)さんだったり、秋田(豊)さんだったり、あれだけの選手が一生懸命練習する。ヤナさんもそうだし。ウォーミングアップから手を抜かずに一生懸命やって、当時若かった俺らがそれを越えるためには、もっとやらないといけないって循環があって。ヤナさんが代表に行って帰って来たら、「何が変わったんだろう」ってよく見ていたから。例えばシュート練習なら、「この人が8本決めたら、俺は9本、10本決めたい」って気持ちでいたし。それがこのチームの良さだから。俺からすれば、ヤナさんたちがやってきてくれたことを、下の選手に対してやればいいだけ。そこに、今年はヤナさんという強力な助っ人も来てくれたからね。
柳沢 (笑)。
柳沢「どのクラブにも優勝のチャンスがあるし、降格の危険もある」
――現在のJリーグには、かつての鹿島や磐田のような常勝チームはなく、毎年、最後まで優勝チームがわからない混戦になります。Jリーグ全体のレベルをどう見ていますか。
柳沢 団子状態というかね。上位も下位も、そのときの状況によってずいぶん変わる。飛び抜けたチームがいない分、どこのクラブにも優勝のチャンスがあるし、J2降格の危険もあると思うんです。鹿島に関して言えば、そんな中でも常に上位を走り続けてきて、ひさびさにACLのチャンスを得た。僕が鹿島でプレーしていた頃、一番やりたかったのはACLでの優勝だったから。俺、鹿島ではACLに出てないんだよね。仙台では出たんだけど。
小笠原 そうなんだっけ?
柳沢 そう。'07年に優勝して、次の年に京都に移籍したから。
小笠原 置き土産だったね。
柳沢 だからこそアジアのチャンピオンに。
小笠原 なりたいね。
柳沢 それが、このクラブにとって一番重要なことなのかなと思います。それを目指すときに、ここへ帰ってくることができた。試合には出られないけど。
小笠原 出ればいいじゃん(笑)。