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<バンディエラ対談・完全版> 小笠原満男×柳沢敦 「鹿島イズムとは、何だ」 

text by

松本宣昭

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto

PROFILE

photograph byDaisaku Nishimiya

posted2015/04/03 11:00

<バンディエラ対談・完全版> 小笠原満男×柳沢敦 「鹿島イズムとは、何だ」<Number Web> photograph by Daisaku Nishimiya

柳沢「試合の時だけ強くなろうと思っても、絶対にならない」

柳沢   今の選手たちも、みんな一生懸命やっているんだけどね。ただ、強かった頃の鹿島は、求めるところ、目指すところがもっと上にあったのかなと思う。あの頃は、みんなが上を見ていたし、常に代表を意識していた。「鹿島でポジションを取れば、代表に近づくんだ」って雰囲気もあったし。試合で勝つには「メンタルが強くないといけない」と言われるけど、いざ、試合の時だけ強くなろうと思っても、絶対にならない。だから、普段の小さなところでも手を抜かない精神が、試合につながっていく。そういう雰囲気を、このチームが失わないようにしていきたいなと思っていますね。

――1月のアジア杯では、鹿島から柴崎岳選手、昌子源選手、植田直通選手の3人が日本代表に選ばれました。代表を経験することで、鹿島での意識も高まるでしょうか。

小笠原   厳しい言い方をすれば、まだあいつらは代表選手と呼べるものではないと思う。まだJリーグで何も残していないし、岳がアジア杯の1試合で活躍しただけで、代表のレギュラーにはなっていないわけだから。それで「俺は代表だ」っていう姿勢があっちゃいけない。そうじゃなくて、代表から帰ってきて、「俺は変わったんだぞ」という姿勢を出してほしいんです。岳にはそういう姿勢があって、いろんな人に見られていることを意識して、フィジカル練習でも人一倍頑張るような選手だから。そういう姿を見て、みんなが「じゃあ、岳よりもっとやらないと、代表には行けない」と思うような雰囲気を作ってもらわないと。「代表に入る」「代表でポジションを取る」と言うのは簡単だけど、大事なのは、それをやり続けられるか。Jリーグで結果を出し続けて、代表に呼ばれ続けて、代表でも良いプレーをし続ける。やり続けるっていうのは、もっと大変なことだから。

柳沢   僕自身も代表に行くと、良い刺激になって鹿島に帰ってきていました。代表で試合に出られなくて、悔しくて、鹿島に帰ってきて、人一倍練習するってことも、何回もあった。満男が言ったように、厳しい日程の中でも代表に呼ばれ続けて、試合に出続けてこそ、本当の意味での代表選手と呼べると思うんです。そうやって鍛えられたタフなメンタルが、代表選手には欠かせないのかなと思います。

小笠原「やっぱり代表は結果を求めていかないといけない」

――お二人が代表でプレーしていた頃と比べて、今の選手たちの考え方は変わってきていると感じますか。

小笠原   やっぱり代表は結果を求めていかないといけないし、それは選手だけじゃなくて、代表を取り巻く環境に関しても。俺の中では植田も源も、岳も含めて、まだ「代表選手」じゃなくて、「代表で出られなかった選手」。だからこそ、言い方は悪いけど、メディアのみなさんも「お前ら、まだまだだぞ」って見方をしなきゃいけないと思うんです。「若いけど代表に行った」とか、「代表選手だ」とかじゃなくて、もうちょっと厳しい見方で、「代表でポジションを取れ」「お前らは、まだ通用しないんだぞ」という意識になってほしいなって。サッカーを取り巻く環境の違いは、イタリアでプレーしたときにすごく感じたから。イタリアのメディアは、トッティであろうと誰だろうと、容赦なく叩くから。「ダメなもんはダメだ」って。あっちは見る目が厳しいよね。

柳沢   どんなトッププレーヤーでも、すぐに限界説が出るもんね。いくら経験がある選手でも、少し悪いプレーをしたら「もう限界だ」と言われるぐらい極端だから。

小笠原   俺も、「この日本人は何しに来たんだ。観光しにきたのか?」って言われたからね。でも、それで選手は悔しいと思って発奮する。岳だって、まだ代表でコンスタントに出たわけじゃない。言い方は悪いけど、アジア杯で1点取っただけでちやほやされちゃいけない。あいつはまだまだできるし、代表でも中心となるべき選手に、「もっとやれ」って言うのが俺らであり、周りであるわけで。勘違いをさせちゃいけない。それをできるのが、アントラーズの良さで、たとえ優勝しても「次も勝つぞ」と言うチームだから。代表に行っても、上にはもっと上がいる。そうやってまた頑張っていくチームだから。俺は、甘えは許しません。厳しくいきます。

【次ページ】 言葉ではなく「背中で教える」のが鹿島の文化。

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