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<バンディエラ対談・完全版> 小笠原満男×柳沢敦 「鹿島イズムとは、何だ」
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byDaisaku Nishimiya
posted2015/04/03 11:00
小笠原「俺は、あと一歩じゃなくて、ぶっちぎりで勝ちたい」
――過去のデータを見ると、鹿島はセカンドステージで強さを発揮してきました。
小笠原 それもどうかと思うけどね(笑)。
柳沢 セカンドステージを獲ってチャンピオンになることが多かったですもんね。
――2ステージ制の場合、戦い方や意識も変わりますか。
柳沢 「いくつまでしか勝ち点は落とせない」と考えることはありました。ジュビロと二強だった頃は、特に。
小笠原 優勝するためには、3敗すると厳しいからね。
柳沢 2敗ぐらいまでだったよな。
小笠原 去年の場合、俺らは10敗しているからね。それで3位というのも……。だからこそ、頭ひとつ抜けたいよね。俺は、あと一歩じゃなくて、ぶっちぎりで勝ちたい。俺は、そこまで求めたい。去年は最終節まで優勝のチャンスがあったと言っても、結局、周りがこけているだけだから。やっぱり自分たちの手で優勝をつかみにいきたいというか。去年は正直、「これで優勝しても」という違和感はあったかな。
「タイトルを獲ることによって、チームは変わる」
――鹿島は一昨年が5位、昨年が3位。今年はもちろん優勝が期待されています。
小笠原 徐々にだけど、「勝ちきる力」はついてきたと思います。ただ、過去と比べれば、まだまだ選手が大人しいし、試合中に俺らに怒鳴ってくるぐらい頼もしくなってほしい。「勝ちに飢えている」チームになれているかと言えば、そうじゃないと思います。でも、タイトルを獲ることによって、チームが変わる予感もあります。タイトルを獲れば、「もう一度獲りたい」と欲が出てくるから。
今の鹿島は、伝統に頼っている部分がすごくあると思うんです。ここ数年でできたチームじゃないから。本当に多くの人が関わって、これだけのものを築いてくれた。「勝ち方」を一言で表現するのは難しいけど、やっちゃいけないプレー、やった方が良いプレー、時間、点差によって「こうしなきゃいけない」「こうやろう」って微調整の仕方を、過去に在籍した人たちが、このクラブに残してくれた。そうやって勝ってきた歴史を、俺は間違いなく下の選手に伝えないといけない。俺やヤナさんが伝えることに対して、下の選手がピンとくるように、タイトルを獲らせてあげたいなって。「こうやって自分たちで獲ったんだ」って言えるように、あいつらの勲章にしてやりたいなって思うんです。
柳沢 今まで僕らは、鹿島の伝統をプレーや姿勢で伝えてきました。これからはコーチとして、言葉でも伝えていかないといけないし、チームとしての雰囲気、厳しさを、もっと追求していかなきゃいけないと思っています。指導者として若い選手にそういう声かけをやっていけたらいいなって。チームとして優勝する雰囲気になった時に、初めてタイトルが近づいてくるはずだから。タイトルを獲って、コーチとしてまた新しいものを残していきたいですね。