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野球の強豪は、吹奏楽の名門も多い!?
完全ブラバン目線で見る選抜甲子園。
 

text by

梅津有希子

梅津有希子Yukiko Umetsu

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photograph byHideki Sugiyama

posted2015/03/20 11:00

野球の強豪は、吹奏楽の名門も多い!?完全ブラバン目線で見る選抜甲子園。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

昨年夏の甲子園も制している大阪桐蔭。野球部の名将が西谷浩一監督だとすると、全国大会常連の吹奏楽部を率いるのは梅田隆司総監督である。

大阪桐蔭のスーザフォンは、1台100万円!

 名門吹奏楽部に共通するのは、ハイクラスな楽器を使っているという点。

 特に際立つのが、ピカピカに光り輝く、大阪桐蔭のスーザフォン。スーザフォンとは、朝顔のように大きく開いたベルが特徴の、野外用の低音楽器。立っていても吹きやすい形状で、通常はチューバ奏者が担当する。多くの学校が、繊維強化プラスチック(FRP)製の白いスーザフォンで演奏する中、大阪桐蔭のスーザは1台約100万円の真鍮製。ちなみにFRP製は約50万円なので、ほぼ倍である。同校にはスーザフォン奏者が10人ほどいるが(多い!)、アルプススタンドから、真鍮だけがもつ重厚な響きをとどろかせている。つまり、1000万円の重低音を放っているのだ。

 キラキラと陽射しを反射しながら、大阪桐蔭のすべての応援曲を底から支えるスーザフォン。テレビで見ていてもあの迫力ある大群はひと目でわかるので、ぜひ注目してみてほしい。

浦和学院vs.龍谷大平安は、サンバとボレロの戦い。

 3日目第3試合の浦和学院(埼玉)vs.龍谷大平安(京都)は、ずばりサンバvs.ボレロ対決。

 吹奏楽コンクール西関東大会常連の強豪・浦和学院の名物応援曲といえば「浦学サンバ」。1~5までバリエーションがあり、底抜けに明るい応援が特徴だ。

 対する龍谷大平安は、吹奏楽部顧問作曲の「怪しいボレロ」で勝負。曲名通りの不気味なメロディーは、ダントツのオリジナリティ。業者からCD収録の依頼があるものの、「オリジナルを大切にしたい」との理由ですべて断っているという。近年真似して演奏する学校が急増中の、人気曲でもある。

 この2校の対戦でしか観られない、稀有なサンバvs.ボレロ対決は超貴重! 龍谷大平安の巨大なHの人文字も見もの。

 茨城の強豪・常総学院も、全日本吹奏楽コンクールの常連校。骨太でクラシカルな応援団が全体を引っ張っていくのが特徴で、大学野球の応援の影響が色濃いという印象。慶応の「ダッシュ慶応」と、早稲田の「大進撃」の両方を演奏するというハイブリッドスタイルは、当然ながら大学野球ではあり得ないことで、高校野球の応援ならではの“いいとこ取り”といえるだろう。

 多くの学校では打楽器パートの生徒がバスドラムやスネアドラムでリズムを刻むが、常総は、大太鼓を革が破れそうなくらい力強く叩く、応援団の大太鼓が全体の演奏を引っ張っていくという珍しいスタイル。オリジナル曲の「JOSOサンバ」に注目。

【次ページ】 近江高校の名物は、地元スーパーのテーマソング!?

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