甲子園の風BACK NUMBER
野球の強豪は、吹奏楽の名門も多い!?
完全ブラバン目線で見る選抜甲子園。
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/03/20 11:00
昨年夏の甲子園も制している大阪桐蔭。野球部の名将が西谷浩一監督だとすると、全国大会常連の吹奏楽部を率いるのは梅田隆司総監督である。
大阪桐蔭の嵐「Happiness」は必聴の美しさ。
大阪桐蔭は、今や野球、吹奏楽ともに一大勢力を築いている。
吹奏楽部の創部は2005年でまだたった10年の歴史だが、創部からわずか2年で全日本吹奏楽コンクール出場を果たすなど、日本の吹奏楽界に彗星の如く現れた。名門校がひしめき合う激戦の吹奏楽コンクール関西大会を突破し、毎年のように全国大会に出場し続けている。
同校の演奏は、とにかくシンフォニックであることにこだわる。吹奏楽部はセンバツの開幕直前まで演奏旅行でニューヨークに遠征しているが、カーネギーホールでも、甲子園のアルプススタンドでも、どこで吹いても美しく交響的で、品がある。
吹奏楽部の全部員が駆けつけると、総勢200人近くにもなる大所帯としても知られるが、高校野球の大阪府大会は鳴り物禁止のため、迫力ある吹奏楽部の応援が聴けるのは、基本的に甲子園だけなのだ。
“浪速のモーツァルト”作曲の「アルプス・キダ・タロー」。
同校の応援を聴いてしみじみ感じるのが「応援の前に音楽である」ということ。応援に熱くなるのはどこの学校も一緒だけれど、どの曲も終始「ff」(フォルテシモ)の大音量で吹き鳴らす学校も多い。本来、どんな曲でも楽譜には必ず音の強弱が書かれているものだが、アルプススタンドではダイナミクス(=音の強弱)まで気にする学校は少ない。
しかし、大阪桐蔭は違う。大音量で吹くべきところは吹き、抑えるべきところは抑える。筆者のお気に入りは、嵐の「Happiness」で、サビの部分のクレッシェンドの美しさは、いつもうっとりと聴きほれてしまう。「ちゃんと強弱つけてさすがだな」と。
大半の曲の終わりを「タッタタタ」のリズムで締めるのも、同校の特徴。AKB48の「上からマリコ」や、SMAPの「SHAKE」など、おなじみのJ-POPも多いが、闘争心をかきたてるような「You are スラッガー」と、“浪速のモーツァルト”こと、キダ・タローが作曲した「アルプス・キダ・タロー」は必聴のオリジナル曲。ぜひ注目して聴いてほしい。