プロ野球亭日乗BACK NUMBER
指揮官の大事な資質は「朝令暮改」!?
小久保監督の中田4番固定を考える。
posted2015/03/13 10:50
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
昨年の巨人のリーグ優勝の要因として原辰徳監督の采配があることは、多くの野球ファンに異論のないところだと思う。
チーム打率はリーグ5位の2割5分7厘でチーム得点もリーグ4位の596点。これだけ打線が機能しない中で、チームを勝利に導いた。140試合で131通りの先発オーダーを組んだのは、その日の選手のコンディションと相手投手との相性を把握しながら、当日の打撃練習を見て固定観念にこだわらない柔軟な視点があったからだ。
この猫の目打線に、当初は批判的な声が圧倒的に多かった。
「これだけ打順を入れ替えたら、選手が戸惑って調子も上がらない」
「巨人が勝つためには監督が動かないこと」
こんな解説や新聞記事が飛び交ったが、当の原監督はこう語るのである。
「今年のチームが去年までとは違うこと、不振の選手が復調するのを待っていたら手遅れになることに早く気づいた。それが一番のポイントだった」
開幕前に掲げた方針は5月にはあっさりと捨てた。それまでチームを支えてきた阿部慎之助捕手(現内野手)や村田修一内野手の状態が上がるのを待つのではなく、言葉は悪いがそうした選手は置いてきぼりにしてでも、好調な選手でクリーンアップを組んだ。結果的には両選手ともにシーズンを通して状態は上がらず、この方針転換が優勝の一つの鍵となったわけである。
組織の長にとって「朝令暮改」は必要な資質である。
「朝令暮改は指導者の常」といわれる。
組織の長が、一度決めた自分の方針に囚われすぎることはむしろマイナスで、一度掲げた方針でもダメだと思ったときには、批判覚悟であっさりと引き下げる勇気もまた必要だということである。
昨年の巨人の優勝は、まさに批判を恐れずに「朝令暮改」できた原監督の冷静な決断と勇気にあったわけである。
さて、そこでいま目を向けたいのが、侍ジャパンの“4番問題”である。