サッカーの尻尾BACK NUMBER
美しき強きバルサ、昔と何が違う?
連続するパスが無くなった理由とは。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2015/02/28 10:50
欧州CL決勝T1回戦。マンチェスター・シティ相手にアウェイで2得点したスアレス。それを称える、ネイマール、ジョルディ・アルバ、そしてメッシ。
メッシは常に前へ、ダイレクトな展開しか考えない。
シャビが全盛期の頃のバルサでは、その頭脳によって計算された、綿密で華麗な展開を実行することにゲームのすべてが捧げられていた。左右への散らし、一度トップへ当ててからの展開などが代表的な例だ。しかしメッシは一切そんなことは考えない。
見るのは常に前。好むのは、よりダイレクトな展開だ。
本来はそのポジションだったはずのラキティッチは、シャビとはスタイルが違い、持ち味はダイナミズムと献身、エリア内への飛び込みだ。メッシが下がると気を利かせてポジションをスライドさせる。
横に繋ぎながら相手を崩しきるのではなく、一気に前へ。メッシは中央から左に流れながら一気に加速し、プレーを展開していった。
メッシらの華麗さに、スアレスの泥臭さがはまった。
かつてメッシがいたポジション、CFの位置にいるのがスアレスだ。
メッシがCFをやっていた時期、バルサはひとつだけ問題をかかえていた。それが、エリア内で勝負するタイプの選手の不在だ。
メッシは偽の9番なので、下がってボールを受ける。エリア内で押し込む、あるいは中央から裏へ抜ける動きが、明らかに欠如していた。ポゼッションで圧倒していた当時のバルサにはその種のプレーが必要なかったということも確かだが、時が経ち、バルサ研究が進むにつれ、「9」不在のバルサの脅威は減ってきた。
スアレスがその問題を解決した。
ルイス・エンリケは思い切ってメッシを右ウイングで起用し、中央をスアレスに任せた。
出場停止処分もあり、シーズン始動が10月末だったということでスアレスはゴールから見放されていた時期もあったが、ここにきて感覚が戻りつつある。メッシやイニエスタ、ネイマールら、華麗さと美しさで成り立っていたバルサの攻撃陣に、野生の泥臭さが見事にはまっている。