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東芝に負けた帝京大、大粒の涙……。
日本選手権、学生vs.社会人の白熱。
posted2015/02/16 12:00
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
Tamon Matsuzono
2月15日、秩父宮ラグビー場の公式観客数は「1万4196人」と発表された。今季のトップリーグでこれを超えたのは、プレーオフ・リクシル杯決勝のパナソニックワイルドナイツvs.ヤマハ発動機ジュビロの一戦(1万6304人)のみ。
第1試合が、神戸製鋼vs.サントリーという、日本ラグビーの歴史を彩ってきたライバル対決だったこともあるだろう。とはいえ観客席の熱量は、第2試合の東芝ブレイブルーパスvs.帝京大の方が高かった気がする。日本のラグビーファンは、やっぱり大学ラグビー好きが多い。そして、早慶明のカタキ役としていつもヒールの立場だった帝京大は、大学選手権6連覇を飾り、今や大学ラグビー界の看板を背負う存在となっているのだ。
1回戦ではトップリーグ10位のNECを31-25で撃破。それも、鍛え上げたフィジカルの強さを前面に出し、小細工なし、スクラムからブレイクダウンから、真っ向勝負を挑み抜いての勝利だったから、この日の2回戦への興味はイヤでも高まった。
東芝といえば、日本選手権優勝6回、トップリーグ制覇は最多の5回を数える日本ラグビー最強チームのひとつだ。大学選手権6連覇に加え、とうとうトップリーグ勢撃破まで果たした学生最強軍団は、その牙城にどこまで迫れるのか? それとも……赤い学生王者は、この壁をも打ち破ってしまうのか?
そして始まった試合は、おそらくは多くのファンが予想した通り、東芝の強さが際立つ形で進んだ。
あらゆる局面で、東芝が少しずつ帝京大を上回る。
開始3分、強い北風を背に帝京大陣に攻め込んだ東芝は、SH小川高廣が抜群のボディバランスで帝京大防御を擦り抜けて先制トライ。18分には元オールブラックスCTBリチャード・カフイが、190センチ101キロの巨体を揺らして約40mを独走。
どちらも、帝京大のタックルが高くなったところを、個人技に優れたランナーがあっという間に走り抜けた形だ。
24分には帝京大が東芝陣ゴール前まで攻め込むが、ゴール前わずか3mで、帝京大FB重一生へ、3年前には帝京大主将だった東芝のSO森田佳寿主将が猛タックルを浴びせ、FWが殺到してターンオーバー。7人制日本代表のFB豊島翔平がロングキックで一気に帝京大ゴール前へ攻め返し、最後はWTB大島脩平が左中間に飛び込んだ。
自陣ゴール前から敵陣まで、タックル、キック、チェイス(追走)、ブレイクダウン――そのすべての局面で、東芝が僅かずつ帝京大を押し込んでいた。ひとつひとつの差は小さくても、その差が積み重なると、じわじわと点差は開いていく。