サムライブルーの原材料BACK NUMBER
内田、闘莉王、三浦淳が心情を吐露。
日本代表、ミーティングの歴史とは。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJMPA
posted2014/12/22 10:40
日本代表の頼れるキャプテン、長谷部誠。内田篤人が無人島に連れて行きたい人を聞かれて「大工、漁師、長谷部」と応えたエピソードは有名。
川口「チームメイトの本音は心に残る」
このときのことをあらためて川口に聞いてみた。
「全員に発言してもらうのではなく、“思っていることがあったら言ってくれ”と意見のある選手に発言してもらう形をとりました。本音をぶつけ合ったほうが、気づかなかったことにも気づけるし、そうすることでチームに化学反応が起きたんだと思います。いい言葉よりも、あのときは(闘莉王のような)胸にグサッとくる言葉のほうが効果はあったのかもしれませんね。チームメイトの本音って、やっぱり心に残るんですよ。ちょっと前になるんですけど、ドイツW杯のときも最終予選のバーレーン戦の前にアツさん(三浦淳寛)が語った言葉がやっぱり胸に響きましたから」
ミーティングは、タイミングを間違えば逆効果になる。
川口の言う「アツさんの言葉」とは、“アブダビの夜”と呼ばれる日のことである。
2005年5月、キリンカップで2連敗してアウェーのバーレーン戦に臨む前、合宿地のアブダビでキャプテンの宮本恒靖が選手を集めてミーティングを開いた。
「みんなW杯に行きたいのか? 俺は年齢的にも最後だし、行きたい」
控えのベテランという立場である三浦の一言がチームの気持ちを一つにさせ、バーレーン、北朝鮮に2連勝してジーコジャパンはドイツW杯の切符をもぎ取ったのである。
このときのことを、宮本は最近こう語ってくれた。
「選手ミーティングは、やればいいってものじゃない。タイミングと状況、あと場のつくり方ですね。アブダビのときは、このときしかないと思っていました。ガラス張りの部屋で、周りが暗くて見えなかったことで余計に集中もできましたし。
(チームメイトは)同志であり、ライバルであり、友人。試合に出ることができていないサブの立場でも一生懸命やっている選手がいて、そういうチームメイトの熱い言葉を聞いたら、自分も絶対やらなきゃいけないっていう思いになりますから」
ここぞのタイミングで全員が集まり、思っている本音を吐き出して心を通わせることによって、チームの結束を強める。辛苦をともにしている同志、ライバル、友人だからこそ、その一言が心に突き刺さるのかもしれない。ただ、タイミングや空気感を間違えてしまえば、逆効果になってしまう可能性もある。
宮本、川口、そして長谷部。
胸に響く言葉の裏には、こうしたリーダーたちの「演出」も隠れている。