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山田哲人を「至宝」に変えた“基本”。
193安打は、ティー打撃から生まれた。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/10/09 10:50
64年ぶりに日本人右打者のシーズン最多安打を更新した山田哲人。日本記録は2010年にマートン(阪神)が放った214本。夢は大きく広がる。
山田哲人の前年までの通算安打は110本だった。
前年まで通算安打が110本だった山田が、プロ4年目の今季、これほどまで安打を量産することができたのは偶然ではない。
必然を呼び起こしたのは打撃の形。シーズンを通して自分のスイングができるだけの鍛錬を積んだからだ。
“外れ外れ”とはいえ、山田はドラフト1位の選手。当然、チームからも将来性を見込まれていたわけだが、入団当初は、「ツボにはまれば打つ」という荒削りな打撃が目立つ打者だった。
そんな山田のスタイルを根底から変えたのが、当時、二軍の打撃コーチを務めていた杉村繁だった。
横浜(現DeNA)時代、内川聖一を球界随一のヒットメーカーへと変貌させた名指導者は、昨年から山田に中距離打者としての自覚を促し、基本から徹底して鍛え上げていく。
毎日1時間のティー打撃が作った強い土台。
その基本とは、ティー打撃である。
「技術的なことを言えば、やっぱりティーをしっかりやってきたことが大きいですね」
山田自身も、今季の成長の要因についてそう語っている。
横からボールをトスして打つ従来のものから、高低や距離も工夫し、椅子に座りながら打つなど、その手法は様々だ。それを、ホームビジター問わず早出特打のフリー打撃のように毎日1時間以上も続けたことで、逆方向への強い打球も多く打てるようになった。
収穫は他にもある。それは、スランプの解消だ。
今季は山田にとってレギュラー1年目。交流戦で打率3割7分8厘をマークし首位打者になったとはいえ、彼のように台頭した若手ならば、体力の消耗が激しい夏場に少なからずパフォーマンスが落ちるものである。
それでも山田は、「バットが振れなくなったというのはありませんでした」と断言する。
試合で本来のフォームが崩されたとしても、翌日にはティー打撃でポイントやタイミングの取り方をすぐに微調整することができる。だからこそ、常に自分の打撃に専念することができた、というわけだ。