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山田哲人を「至宝」に変えた“基本”。
193安打は、ティー打撃から生まれた。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2014/10/09 10:50

山田哲人を「至宝」に変えた“基本”。193安打は、ティー打撃から生まれた。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

64年ぶりに日本人右打者のシーズン最多安打を更新した山田哲人。日本記録は2010年にマートン(阪神)が放った214本。夢は大きく広がる。

菊池、大島の猛追に感じた動揺。

 山田のバックボーンとなったティー打撃は、メンタル面でも大きな効果をもたらした。

 8月終了時には安打数でリーグトップに立っていた山田だが、9月も下旬に差し掛かると広島の菊池涼介と中日の大島洋平が猛追。29日には、ふたりに追いつかれてしまった。

 本音を言えば動揺もあった。それでも、今まで続けてきたことを信じればタイトルを獲れると思えた、と山田は言う。

「最後のほう、菊池さんと大島さんの調子がよくて追いつかれて。試合前とかに、『今日は打ったのかな?』とかちょっと気になったり、自分に対してプレッシャーを感じた部分もありました。

 でも、杉村さんに『絶対に最多安打のタイトル獲るぞ!』と言われながらずっとティーをしてきたし、悪いところを修正することができたんで、バットが振れなくなるようなことはなかったですね」

「3年以上レギュラーとして結果を残して一人前」

 タイトル争いと最多安打記録の更新という重圧と戦いながら、最終的にいずれの命題もクリアすることができた。

 シーズン193安打。打率はセ・リーグ3位の3割2分4厘、本塁打はリーグ日本人最多となる29本をマークするなど、山田はわずか1年にして「ヤクルトの至宝」「球界を代表する打者」と呼ばれるようになった。

 今季限りで退任した小川監督も、大ブレークを果たした若武者に惜別の言葉を贈る。

「彼はこれから、長い間ヤクルトを背負って立つ選手になってもらわないといけないですから。本人にとっては大変だろうけど、来年以降ももっともっと成長して、強いヤクルトを引っ張っていってほしいですね」

 指揮官の言葉を咀嚼して真意をたどれば、「1年だけ結果を残して満足してはいけないよ」と激励しているようにも思える。

 長年にわたり結果を残してきた先人たちは、口を揃えるように「3年以上、レギュラーとして結果を残して初めて一人前だ」と、自らの経験則を述べている。

【次ページ】 山田「今年は正直、自分のことだけで精一杯だった」

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