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独立リーガー梶田宙、異例の引退式。
ジーターより、稲葉よりも輝いた日。
posted2014/10/08 10:40
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kei Nakamura
今年は、印象的な「引退記念試合」が続く。
9月25日、ヤンキースタジアムでは、本拠地最後の試合となったデレク・ジーターが劇的なサヨナラ安打で花道を飾った。
10月5日、札幌ドームで行なわれた稲葉篤紀の引退記念試合も、いいものを見させてもらった。最後のセレモニーでファンが披露した4万人の「稲葉ジャンプ」は圧巻の一語に尽きた。
引退試合は、その選手がどんな野球人生を歩んできたかを端的に物語る。そういう意味で、個人的にもっとも印象深かったのは9月13日、高知県・土佐山田スタジアムで行なわれた、ある独立リーガーの引退試合だった。
梶田宙、31歳。
おそらく彼の名前を知っているプロ野球ファンは、ほとんどいないだろう。四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスに所属した選手で、人呼んで「ミスターアイランドリーグ」。四国ILが発足した2005年から唯一、10年間プレーし続けた選手だった。
NPBでも、これだけ惜しまれる選手は稀ではないだろうか。
その梶田の引退記念試合の観客は747名だったが、予想した以上に盛大だった。
球場では直筆のサインボールや記念Tシャツなど数種類の記念グッズが販売され、試合中、梶田が打席に立つと、1枚百円で販売されていた「宙さん、ありがとう」と書かれた赤いメッセージボードがそこかしこで掲げられる。試合後のセレモニーではプロのバンドの生演奏があり、何人ものファンや関係者が花束を送った。中には泣き崩れ、立ち上がれなくなってしまう年配の女性もいた。
試合後、球場の外でファンを見送った梶田の前には長蛇の列ができた。そして約1時間、サインと記念撮影に応じた。
「ずっとサイン書いてましたね(笑)」
おそらく、NPBで10年間プレーしても、これだけ惜しまれて去って行く選手は稀なのではないだろうか。