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米マイナーに、7億円の黒字球団!?
日本の二軍と全く違う経営方法とは。
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byAFLO
posted2014/10/06 10:30
中島裕之もサクラメント・リバーキャッツに所属していた。マイナーリーグは、日本の二軍とは全く違う組織体系になっている。
MLBが支配下選手の育成をMiLBに依頼する関係。
遠慮がちにこう語る橋本さんが手にしていた給料は、実はMiLBの所属チームが支払っていたわけではありません。
MiLBには、MLBの各球団が保有しているチームもありますが、大半はそれぞれにオーナーがいて独立採算で経営されています。そしてMLB球団との間でPDCと呼ばれる契約を結んでいます。PDCとは、Player Development Contractの略。つまり、MLB球団の選手育成をMiLBのチームが担う構図となっているのです。
具体的に言うと、選手を供給するMLB側は、選手やコーチスタッフの給料、さらにバットやヘルメット等の用具にかかるコストを負担し、MiLB側は実際のチーム運営や集客等のマーケティングを担当するという役割分担です。橋本さんのケースに当てはめれば、3A時代に給料や用具代を負担していたのはグリズリーズではなく、ジャイアンツだったということになります。
意外と収益力があるMiLBの球団。
2人目の証言者は大塚義之さん。日大三高から新日本石油ENEOS(現JX-ENEOS)を経て、2002年にピッツバーグ・パイレーツ傘下、ルーキー・リーグのガルフ・コーストリーグ・パイレーツに内野手として入団しました。2年目には1Aの頂点に立ってチャンピオンリングを手にしたほか、昨季DeNAに所属したモーガンや広島で活躍しているエルドレッドとともにプレーした経験をお持ちです。
「1Aでは月1600ドルくらいの給料でしたが、試合のない日にはミールマネー(食事代)として20ドルの支給がありました。1Aといっても、“キッズ・デー”のようなファンサービスが充実していて、球場はよく満員になってましたね。企業とタイアップしたイベントもしょっちゅうでしたし、球場には広告の看板もたくさん出ていました」
大塚さんの言葉にもある通り、MiLBの人気は決して低くはなく、一定の収入規模を持っています。先ほどはコストの話でしたが、次は収入分配の状況を見てみましょう。
まずチケット収入については、MiLB側は、ごく一部を提携しているMLB球団に支払います。そして、チケット以外の収入(スポンサー、グッズ関連など)は分配する必要がなく、全てMiLB側のものとなります。
つまりMiLBの球団経営は、大部分のコスト負担をMLBに委ねつつ、収入の大部分は手中に収めることができるという利益率の高い構造となっているわけです。