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胸躍るカードと超高校級選手たち。
今夏の甲子園も初戦から熱い!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKyodo News
posted2014/08/08 10:40
開幕戦の龍谷大平安対春日部共栄、5日目第1試合の明徳義塾対智弁学園、6日目第3試合の東海大相模対盛岡大付など、注目カードが目白押し。甲子園90周年の今大会、栄冠の行方は?
強豪対決以外にも“超高校級”から目が離せない。
強豪対決以外で興味があるのは“超高校級”と形容される選手たちのプレーである。ここまで紹介した選手以外にも、もちろん注目選手はいる。
初日には、先ほど予選での不甲斐なさを批判はしたが、徳本(龍谷大平安)の俊足に期待している。今春の選抜決勝では連戦の疲れなどどこ吹く風で、第1打席で三塁打を放ち、このときの三塁到達タイムは私のストップウォッチでは11.08秒だった。これは私が今年に入って観戦した179試合(プロ23試合、アマ156試合)の中で3番目に早いタイムである。
同じく初日の第3試合には富山商の左腕・森田駿哉(3年・左投左打)が登場する。最速144kmのストレートをクセの少ない盤石の投球フォームから投じる、というのが森田の得難い長所である。
2日目の第2試合では石川大会決勝で、8点差を9回にひっくり返した歴史的逆転劇の中で2ランホームランを放った星陵の岩下大輝(3年・右投右打)に注目が集まる。投手としても速球派で知られ、ストレートの最速は145km。地方大会期間中、スカウトに話を聞くと「(岩下は)夏にもう一度確認します」と興味津々の様子だった。甲子園ではどういう評価が下されるのか楽しみだ。
どれだけ調べても知らない選手が活躍するのが甲子園。
3日目の第1試合では“機動破壊”の異名を持つ韋駄天集団の中で、高校通算57本塁打を誇る健大高崎の脇本直人(3年・外野手・右投左打)に注目が集まる。群馬大会では打率5割と打ちまくり、2回戦で激突した前橋育英戦では昨年の優勝投手・高橋光成から逆転打、準決勝の桐生第一戦では今春の選抜で活躍した山田知輝からホームランを放つなど、名だたる好投手を打ち込んでいるのが頼もしい。奪三振率9.00の岩国・柳川健大(3年・右投右打)なら相手にとって不足はないだろう。
大会5日目に注目すべきは第2試合に登場する地元・大阪桐蔭の選手たち。昨年から試合に出ていた香月一也(3年・内野手・右投左打)、峯本匠(3年・内野手・右投左打)、森晋之介(3年・外野手・右投左打)に、正随優弥(3年・外野手・右投右打)、中村誠(3年・外野手・右投右打)が絡む打線は大会屈指と言っても過言ではない。
課題と言われていた投手力もサイドハンドから伸びのあるストレートを投げる福島孝輔(3年・右投左打)、大阪大会の決勝でPL学園を1失点完投に抑えた田中誠也(2年・左投左打)が揃い、甲子園を勝ち抜く陣容は整っている。
駆け足で初戦の注目カードと注目選手を紹介したが、甲子園大会のいいところは事前にどれだけ調べても、その存在を知らなかった選手がひょいと目の前に出現して好プレーを演じるところにある。今夏も全日程、甲子園に通う予定なので、そういう選手がいたらこのコラムで紹介していくつもりである。