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胸躍るカードと超高校級選手たち。
今夏の甲子園も初戦から熱い!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKyodo News
posted2014/08/08 10:40
開幕戦の龍谷大平安対春日部共栄、5日目第1試合の明徳義塾対智弁学園、6日目第3試合の東海大相模対盛岡大付など、注目カードが目白押し。甲子園90周年の今大会、栄冠の行方は?
智弁学園の岡本和真を明徳義塾はいかに抑えるか。
大会5日目の第1試合も、明徳義塾の好投手・岸潤一郎(3年・右投右打)対超高校級スラッガー・智弁学園の岡本和真(3年・右投右打)の対決が注目を集める。
奈良大会で打率.556、本塁打3、打点14と圧倒的な成績を残している岡本を、'13年選抜以降、準決勝→準々決勝→準々決勝進出の原動力になっている岸がどう抑えるか。岸の生命線は制球力とスライダーのキレ味、さらに打者のタイミングを微妙にずらす技巧にある。ここを突き崩すための技術的な工夫こそ、プロが岡本に求めるプラスアルファの部分である。いいのはわかっている、しかし難敵を打ち込んでもっとよさをわからせてくれ、というのがスカウトの偽らざる思いだろう。
優勝候補を1校に絞るなら、東海大相模を挙げる。
明徳義塾対智弁学園を上回る1回戦最大の注目対決が大会6日目の第3試合、東海大相模対盛岡大付である。
東海大相模には好投手、青島凌也、佐藤雄偉知(ともに3年・右投右打)、吉田凌(2年・右投右打)、小笠原慎之介(2年・左投左打)が揃う。3人の好投手なら春夏連覇した'87年PL学園の野村弘(のち弘樹、元横浜)、橋本清(元巨人)、岩崎充宏(青山学院大→新日鉄名古屋)、さらに'83年中京(現中京大中京)の野中徹博(元阪急など)、紀藤真琴(元広島など)、森昌彦(亜細亜大→NTT東海)という前例がある。しかし、高レベルの投手が4人揃うというのは記憶にない。
チーム打率.421の打撃面も豊田寛(2年・外野手・右投右打)をはじめ破壊力を秘めており、今大会の優勝候補を1校だけ挙げろと言われたら躊躇することなく東海大相模を挙げる。そんな強い東海大相模が敗れるとしたら「超高校級投手と対戦する初戦」だろう。相手投手が疲れのまったくない状態で1回から全力で腕を振って150km級のストレートを投げ込み、多彩な変化球を交えて緩急を操れば、いくら強打の東海大相模でも簡単には攻略できない。
150kmの快速球に多彩な変化球を操るその超高校級投手とは、盛岡大付の松本裕樹(3年・右投左打)のことである。岩手大会では42回を投げ、被安打25、奪三振42、失点9と安定感は十分。武器は最速150kmのストレートだが、スライダー、カーブ、チェンジアップ、フォークボールと球種は豊富で、使いどころも心得ている。
今夏の地方大会は昨年の選手権優勝校・前橋育英、今選抜の4強・豊川、佐野日大、さらに安楽智大を擁する済美らが次々と苦杯をなめ、埼玉大会などは前で紹介したように全国的な強豪、花咲徳栄、浦和学院、聖望学園が1~3回戦までに姿を消す異常事態に陥っている。優勝候補の東海大相模が、強豪をめぐるそういった負の連鎖に巻き込まれる可能性は十分あると思う。