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南米の「神話」が合理主義に屈した日。
7-1がブラジルに問う、究極の難題。 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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posted2014/08/04 10:40

南米の「神話」が合理主義に屈した日。7-1がブラジルに問う、究極の難題。<Number Web> photograph by Getty Images

ブラジルの、そして南米サッカーの持つ神話を過去の物にしたのは、ドイツが体現した完全な合理主義だった。サッカーの歴史はどこへ向かうのだろうか。

データにも現れた、チームの練度の差。

 チームの練度の差は、データにもはっきりと現れている。

 ドイツはブラジル大会で18本のシュートを決めたが、そのうち17本がペナルティエリア内から放たれたものだった。対するブラジルは11本のシュートを決めたものの、ペナルティエリアの外から放ったシュートが3本を数える。

 関連して、ドイツの場合はペナルティエリア内と両サイドからのチャンスメイクが59.2%だったのに対して、ブラジルは47.5%に留まり、ゴール正面からのシュートやチャンスメイクの割合が非常に多かった。これはドイツと対照的に、ブラジルが相手の守備陣を崩しきれていなかったことを示している。

戦術の根幹をなす、ポジショニングとフリーラン。

 では具体的に、ドイツ代表はどんなサッカーを展開したのか。

 まず攻撃戦術の根幹をなしていたのは、的確なポジショニング(カバーリングも含む)と質の高いフリーランニングだと言っていい。

 ドイツの攻撃陣は、敵のMFとDFのラインの間、さらにはDFの間に走り込んでパスを受けるポジション取りを徹底。その上で、ワンタッチ、ツータッチでボールをさばきながら、スペースに走り込んでくる選手にパスを繋ごうとしていた。たしかにケディラなどは縦方向への飛び出しでアクセントを加えていたが、ドイツ代表はスピードのあるウインガーなどを活用していたわけではない。

 その上で、次に行なうのがシュートのお膳立てである。

 セットプレーを別にすれば、ペナルティエリア周辺での崩し方は最終的に3パターンに絞られる。DFの裏に味方を走らせるスルーパス、サイドからの長短のクロス、そしてマイナスの折り返しだ。

 これらの方法論は特に目新しくはないが、そこにはいくつかの工夫がこらされている。

 スルーパスに関して言えば、体の正面方向(踏み込んだ軸足の方向)にそのままボールを送り出すのではなく、蹴り脚を内側に捻りながら角度のついたボールを出し、相手DFの裏をかくプレーを多用していた。これはイニエスタなどがよくやってみせるのと同じ種類のプレーだ。

 敵の裏をかくための味付けは、サイドからのクロスや、マイナスからの折り返しにもなされている。普通ならば当然、シュートを打つような場面でも、「スルー」(スルーパスではなく、パスを受けずに素通りさせるプレー)や「ダミーラン」、バスケットでいうところの「スクリーン」などを駆使しながら、ラストパスの受け手を一人飛ばしたり、あえて逆サイドにもういちど切り返し、完全にフリーに近い状況で、味方にシュートを打たせようとしていた。

【次ページ】 「魔の6分間」の4得点は、全てこのパターンだった。

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