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青木宣親を苦しめるチームの「思想」。
出塁率という最大の武器が足かせに?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2014/07/25 10:30
出塁率は青木宣親の最大の武器だったが、今季はそれにこだわるあまりバッティングが窮屈になっている。下位の打順で彼本来の思い切りを取り戻して欲しいものだ。
器用さゆえにチームの「思想」に応えようとしすぎた。
ただしその姿は、チームの「思想」に応えようとするあまり、青木のバッティングが窮屈になっているようにも私の目には映った。
事実青木の今季の成績は、各部門でここ数年で最低の数字だ。
打率 | 本塁打 | 出塁率 | 長打率 | OPS | |
2012 | .288 | 10 | .355 | .433 | .788 |
2013 | .286 | 8 | .356 | .370 | .726 |
2014 | .259 | 0 | .328 | .318 | .646 |
カウントを稼ごうとするあまり、結果的に追い込まれて出塁率が下がる。小技を意識したためか右方向への強い打球が消え、左方向への流し打ちも目立った。本塁打は現時点ではゼロ。青木の長打が消えてしまった。
青木のような器用な打者は、チームや監督の発想によってバッティング・スタイルが変わってしまうケースがある。今季はまさにそのケースであり、ここまでのところ青木とチームのスタイルがうまく噛み合っていない状況になってしまった。
青木を下位に下げ、上位打線の長打にすがる監督。
チームは5割前後を行ったり来たりで、オールスター明けは4連敗。ホワイトソックスに2連勝し、なんとか勝率を5割に戻してはいるが、7月23日現在で首位タイガースとの差は7ゲームにまで開いている。
ヨースト監督も必死だ。後半戦に入り、青木よりもパワーのあるケインをトップバッターに据え、上位へのつながりを考えて青木を9番、もしくは8番に据えている。出塁率云々よりも、上位打線の長打で打開を図ろうとしているのが明らかだ。
本来であれば、青木が1番で出塁、時に意外なパワーを発揮してチャンスを作り出すのが望ましいだろう。そうすればケインを2番、あるいは6番あたりに置くことで打線の厚みが増す。