ブラジルW杯通信BACK NUMBER
開幕戦で見えたブラジルの「死角」。
ネイマール&オスカルのドリブル依存。
posted2014/06/13 11:10
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph by
Getty Images
やはり、ワールドカップは一筋縄ではいかない。
今大会の本命と目されるホスト国のブラジルが、苦戦の末に曲者クロアチアとの開幕戦を制した。スコアは3-1。しかも、至宝ネイマールが2ゴール、さらに名手オスカルがクロアチアの息の根を止める3点目を奪った。1失点もやや不運なオウンゴールだったことを考えれば、良いこと尽くめの白星発進のようにも思える。だが、実際には手放しで喜べる内容ではなかった。
サッカー王国に死角あり――。
クロアチアの善戦により、それが鮮明に浮かび上がったように思う。いったい、ブラジルの死角とは何なのか。古来の戦法にたとえれば「城攻め」だ。自陣に引いて堅固な守備ブロックをこしらえる相手に対しての、苦手意識を露呈した感が強い。序盤から慎重に守りを固め、カウンターアタックを狙うクロアチアにボールを「持たされた」ことが、苦戦の始まりだった。
ネイマールとオスカルのドリブル以外、攻め手なし。
ボール支配率はクロアチアの42%に対し、ブラジルは58%。パス成功数もクロアチアの385本に対し、ブラジルは558本と大きく上回った。だが、パスワークの質で勝ったのはむしろ、クロアチアの方である。ボランチのルカ・モドリッチを軸にして巧みにボールを回すクロアチアとは対照的に、ブラジルには「ブロック崩し」の起点となる司令塔が見当たらない。前線のアタック陣に縦パスが入らず、業を煮やしたネイマールが球を求めて後ろに引いてくる場面が何度もあった。
この日のブラジルは最前線で待つストライカーのフレッジとウイングのフッキが攻撃の局面にほとんど絡めず、フッキに至っては68分でベンチに退いている。頼みの綱は狭いスペースでも勝負できるネイマールとオスカルの2人だけ。パスワークに安定感の乏しいブラジルにとって、守備ブロックを攻略する手立ては、ネイマールとオスカルのドリブルワークにほぼ集約されている。ブラジルを救ったのは、言わば「個の力」だった。