ブラジルW杯通信BACK NUMBER
開幕戦で見えたブラジルの「死角」。
ネイマール&オスカルのドリブル依存。
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byGetty Images
posted2014/06/13 11:10
ネイマール(左)とオスカル(中央)のゴールでクロアチアを逆転し、母国でのW杯を白星でスタートしたブラジル。しかしこのまますんなりと優勝させてくれるほど、W杯は甘くないはずだが……。
堅守速攻のブラジルには、ボールを持たせろ?
そもそも、今大会のブラジルはパスワークを売り物にしたチームではない。全員がハードワークをこなし、堅い守備からのカウンターアタックに勝機を見いだす堅守速攻が持ち味だ。攻めてくる相手には滅法強い。昨年6月のコンフェデレーションズカップ決勝で世界王者スペインを破ったのは、その好例だろう。最終ラインの手前に構えるパウリーニョとルイス・グスタボのドイス(2人の)ボランチはボールハントのエキスパートであり、鋭利なカウンターアタックの導火線でもある。
反面、ブラジルが容易にボールを支配できる展開になると、2人のボランチはほとんど見せ場がなくなってしまう。クロアチア戦は、その典型的なパターンと言えた。結果、ブラジルのベンチは63分に精彩を欠くパウリーニョをベンチに下げ、エルナネスを投入している。それでも攻めあぐねる状況を改善するまでには至らなかった。試合後、敗れたクロアチアのニコ・コバチ監督が「手応えアリ」といった表情を浮かべていたのも、ブラジルを苦しめた自信からだろう。
2人を徹底的にマークさえしてしまえば……。
独特の緊張感漂う開幕戦は「内容より結果」とも言われる。ひとまず重圧から解放されたブラジルが2戦目以降、パフォーマンスを上げてくるのも確かだろう。だが、チームに潜在するリスクが消えるわけではない。
この日のクロアチア以上に強力な守備ブロックを誇るチームを前にしたとき、再び苦戦を強いられるのではないか。アタッカー陣の攻め手が極端に不足し、ネイマールとオスカルのマジックに強く依存している点も気がかりである。
ネイマールとオスカルの2人を徹底的にマークし、決定的な仕事をさせなければ、勝機は十分――。開幕戦の戦いぶりを見ながら、静かにほくそ笑んだライバルたちは少なくないかもしれない。
ツボにはまったときのブラジルは確かに強い。だが、ツボにはまらなかったとき、この日のように天才たちが額面どおりの働きをみせてくるのかどうか。死角をさらしたホスト国にとって、ファイナルへの道のりは想像以上に、高く、険しいかもしれない。