日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
コスタリカを後半3点で逆転した日本。
「走らせる」スタイルはW杯で通じるか。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2014/06/03 17:45
キプロス戦とはうってかわり、攻撃で違いを生み出すとともに、柿谷曜一朗とのセレッソコンビでゴールも決めた香川真司。
本大会でも相手の失速を招く、走らせるゲームプラン。
3失点したコスタリカは、後半戦に入って運動量がガタ落ちした。日本と同じくコンディション調整の最中ではある。コスタリカのホルヘ・ルイス・ピント監督は「日本は5人を代えて、我々は本番を想定して3人までにした」と後半の失点を特に問題視したわけではないものの、日本の攻撃の迫力がコスタリカを疲弊させたことは間違いないと言っていい。
高温多湿のW杯会場を想定すれば、主導権を握って相手を走らせて疲労を蓄積させるという大枠のゲームプランが日本にはある。この日は気温23.7度、湿度66%と過ごしやすかった。条件がさらに厳しくなっていれば、コスタリカにもっとダメージを与えられていたのかもしれない。
トップ下を委ねられた本田の「上昇」が待たれる。
香川の復活ゴールに、山口蛍の安定感など収穫は多かった。だが、やはり気になってしまうのは、なかなか上がってこない本田圭佑の調子。実際は多少なりとも上がっているのだろうが、周りの「上昇度」に比べると明らかに差があるために上がっていないように感じてしまう。
1アシストと最低限の結果を残したとはいえ、決定的なシーンでゴールを奪えなかった前半28分のプレーや、ボールを収めても踏ん張りの利かない場面などを見るにつけても、本来の調子からすれば程遠い。指揮官はこの日も敢えて90分プレーさせ、トップ下に代役を試すこともなく、全幅の信頼を寄せている。だが、大黒柱の彼のところでミスが生まれてしまえば、それこそカウンターの餌食になってしまう怖れもある。
1トップやボランチを含め、競争の激化がいいサイクルを生み出していることとは対照的に、指揮官はトップ下を本田以外に委ねることは決してないだろう。彼が本番に合わせていることは百も承知している。だが、中3日で行なわれる最後のテストマッチ、ザンビア戦(6日)では、輝きの一端を見たいものだ。
守備の課題や、本田や長谷部の状態も心配だが、チームのムードは決して悪くない。しかし、いつ落とし穴が待っているか分からない。
勝って兜の緒を締めよ――。
強く吹くタンパの夜風は、そう言っているようだった。