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実現しなかった24季ぶりの戴冠。
リバプールの波乱に満ちた1年間。  

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byGetty Images

posted2014/05/12 12:25

実現しなかった24季ぶりの戴冠。リバプールの波乱に満ちた1年間。 <Number Web> photograph by Getty Images

リバプールの、そしてイングランドの象徴の頭上に栄冠は輝かなかった。それでもジェラードは、波乱のシーズンを戦い抜いたチームを称えた。

ジェラードをキーマンにした遅攻の分厚さ。

 と同時に大きな特徴となったのは、遅攻の分厚さだ。

 スアレスは言わずもがな、コウチーニョやスターリングといった選手は一人で守備陣を突破できるだけでなく、ボールをキープする能力も高い。加えて組織的なパスコースの確保やサポート、敵の裏をかくフリーランの意識も徹底していたため、リバプールはボールをキープしながら、スルーやワンツー、ワイドに開いた選手からのクロス、マイナスの折り返し、中盤に戻してのミドルシュートと、実にバリエーション豊富な攻撃を展開することができた。

 しかもポジション取りがいいため、リバプールの選手達は容易にボールを失なわずに、波状攻撃を繰り返していける。そのキーマンとなったのが、アンカーとして完全復活したジェラードである。

 速攻と遅攻、2つの武器を手にしたリバプールは、ゲーム運びに関して得意とする「型」を手に入れた。あまり注目されていないデータではあるが、今シーズンのリバプールは試合開始15分以内に決めたゴール数の多さに関しては、プレミアの中でトップクラスを誇る。キックオフ直後から猛烈な圧力をかけて、まずは先制点をもぎ取る。当然、相手は前に出てこざるを得ないため、そこを逆手に取り、切れ味鋭いカウンターで追加点を奪う展開に持ち込むのである。

 この種の試合巧者ぶりは、シーズンを通じた戦い方についても指摘できる。今シーズンのプレミアでは、アーセナルやチェルシーなども首位に浮上していたが、リバプールは2月8日、アーセナルを5-1で下してから11連勝を飾り、一気に首位を奪取。他のチームに故障者が続出し始め、調子を落とす中で一気にタイトル争いで優位に立った。

薄い選手層を感じさせなかった2つの理由。

 リバプールの選手層は、決して厚くない。

 にもかかわらず最後の最後までチームが好調を保つことができたのは、試合数の少なさにも起因している。リバプールの昨シーズンの順位はプレミアで7位。このためCLはおろか、ELにも出場することはできなかった。加えてFAカップやキャピタルワンカップでも早々と敗退してしまったため、ロジャーズは故障者にさほど悩まされずに、プレミアでの戦いに集中することができたのである。

 もう一つは、ロジャーズのチーム改革が徐々に実り始めたことだ。スターリングやコウチーニョの成長は既に述べたが、今シーズンのロジャースは4-3-3や中盤をダイヤモンド型にした4-4-2、さらには4-2-3-1や3-5-2まで使い分けている。迫力に富む攻撃的なサッカー同様、このような戦術の柔軟性もまた、リバプールの快進撃を支えた要素だった。

【次ページ】 最後の最後に高くついた、守備の脆さ。

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