オフサイド・トリップBACK NUMBER
実現しなかった24季ぶりの戴冠。
リバプールの波乱に満ちた1年間。
posted2014/05/12 12:25
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph by
Getty Images
5月11日、アンフィールド。
ニューカッスルをホームに迎えたリバプールの選手達が、試合終盤、所在なげにボールを回し続ける。試合は2-1で逆転していたが、シティ・オブ・マンチェスターでは、シティのプレミア制覇を祝う大騒ぎが既に始まっていた。
審判が長いホイッスルを吹き、ジェラードたちが肩を落として通用口に消えていく。24シーズンぶりのリーグ優勝という夢は、こうして砕け散った。
選手や監督、そしてサポーターの落胆は大きい。シーズン最終盤での失速を嘆く声は、ジャーナリストの中にも少なくない。リバプールで名FWとして活躍したケビン・キーガンの言葉を借りれば、「プレミアの歴史そのものにとって、大きな転換期になる可能性」もあったからだ。
ただし冷静に考えるなら、リバプールはよく健闘したと言える。シーズン開幕前、リバプールがタイトル争いに絡むと予想した者はほとんどいなかった。たしかにチームの調子は上向きつつあったし、ブレンダン・ロジャーズ監督によるチーム改革も進みつつあったが、彼自身が述べていたように、「あくまでも現実的な目標はCL出場権の確保」だった。
スアレスの覚醒と、驚異的なカウンター。
では今シーズンのリバプールは、なぜサプライズを起こすことができたのか。
まず指摘できるのは、31ゴールを叩き出したルイス・スアレスの活躍だろう。スアレスは1シーズン38試合制になってからのレコードホルダーだった、アラン・シアラー('95-'96シーズン)とクリスティアーノ・ロナウド('07-'08シーズン)に並んだ形になる。
しかもこれはスアレスが昨シーズン末に、馬鹿げた噛み付き事件を起こし、リーグ戦の冒頭5試合を欠場していた点を考えれば、驚異的なハイペースだった。
とは言え今シーズンのリバプールは、決してスアレス頼みのチームだったわけではない。リバプールの攻撃陣には、スタリッジやスターリング、コウチーニョ等の若く、才気にあふれるメンバーも揃っていた。
もともとシーズン開幕当時は、スアレスとスタリッジが攻撃陣の軸となると見られていたが、シーズン途中からはスターリングやコウチーニョも急成長。
語弊をおそれず言えば、今シーズンのプレミアで最も迫力のあるカウンターを展開するチームへと成長した。スアレス、スタリッジ、さらにはスターリングやコウチーニョが脱兎のごとく前線目がけて一斉に駆け出し、ポジションとパスを交換しながらゴールを脅かしていく様は圧巻だった。今シーズンのプレミアではサウサンプトンやエバートン等、カウンターを武器に新風を吹き込んだチームがいくつかあるが、リバプールは代表的な存在だった。