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モイーズ電撃解任を徹底検証!
見えない未来とファーガソンの影。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byGetty Images
posted2014/04/23 11:25
「選手たちは自分自身を恥じるべきだ」(ロイ・キーン)、「監督業には必ず2年の期間が与えられるべきだ」(ガリー・ネビル)。クラブのOBたちも一様に今回の早期解任には戸惑いを示している。
CLという時限爆弾。
解任が驚きではない二つ目の理由は、決断が下されたタイミングに関係する。
思い出されるのは、サンデイ・ミラー紙のサイモン・マロックとの会話だ。12月にマンチェスターを訪れた際、彼は予言めいたことを口にしていた。
「モイーズの運命を占う上で、キーワードになるのは『CL』だと思う。
今シーズンのユナイテッドが、プレミアで優勝するのはまず不可能だろう。FAカップを別にすれば、残るタイトルはCLだけになる。
CLはユナイテッドやモイーズにとって、トップクラブとしてのメンツを保つためだけに重要なんじゃない。クラブの運営そのものにとって、決定的に重要なんだ。
ユナイテッドはアメリカの株式市場に上場されているし、オーナーのグレイザーは、チームがCLに出場し続ける事を前提に、クラブの買収資金を返済していく計画を立てている。それにCLに出場してメディアに露出することは、スポンサーを獲得する上でも鍵になってくる。僕はユナイテッドがCLで負けるか、CL出場枠が確保できなくなった瞬間、物事が動くんじゃないかと見ているんだ」
CLを巡るユナイテッドの本音と建前。
事実、直近で今回のような危機が浮上したのは、3月中旬、CL決勝トーナメント1回戦のオリンピアコス戦、セカンドレグが間近に迫った時だった。モイーズの解任論はかなり早い時点から浮上していたが、関係者の間では、オリンピアコスとの試合が「審判の日」になるのではないかという噂が飛び交っていた。
そして2度目の本格的な危機が今回である。CL準々決勝でバイエルンに苦杯をなめたユナイテッドがCL出場権を確保するためには、プレミアで4位に食い込むのが至上命題となっていた。しかし一縷の望みは、あえなく絶たれた。
たしかにユナイテッドの首脳陣は「CLに出場できなくなったとしても、財務状態は安泰だ。我々はモイーズを軸に据え、長期的なチーム作りを進めていく」と主張し続けていた。この手のコメントは、2月上旬にも出されている。
だが一連の顛末はマロックの読みの正しさ、つまりはCLの存在が、いかにユナイテッドにとって大きかったのかを裏付ける形となった。