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アトレティコのホームで納得の0-0。
専守防衛のチェルシーが得た“優位”。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2014/04/23 12:10

アトレティコのホームで納得の0-0。専守防衛のチェルシーが得た“優位”。<Number Web> photograph by AFLO

アウェーでの1stレグをスコアレスドローで終え、達成感をあらわにするチェルシーのランパード。モウリーニョの復帰1年目の冒険は、CL決勝に辿り着くのだろうか。

GKの緊急交代の動揺につけこむ手もあったが……。

 当然、ボールはアトレティコに支配された。だが、明らかなチェルシーの「守勢」も「劣勢」とは言い難い。

 GK交代直後の19分、アトレティコがCKでショートコーナーを選択してくれたことは幸いだった。急遽投入されたマーク・シュウォーツァーは、チェフが病欠した3日前のリーグ戦でセーブミスで失点を招いたばかり。リーグ優勝の望みが事実上途絶えた敗戦で、リードを失う痛恨の失点でもあった。

 41歳の大ベテランとはいえ、その動揺を引きずっていても不思議ではない。アトレティコにすれば、CKからいきなりクロスを放り込んで揺さぶる手はあった。

 突然の交代ではあったが、CL準決勝初体験のディエゴ・シメオネ監督とその一行に、機転をきかせてつけ込む狡猾さはなかったようだ。結果的にシュウォーツァーが強いられたセーブらしいセーブは、ガビのFKを弾き出した76分の1本のみに終わった。

 もちろん、堅守実現の裏には守備陣の集中力の高さもある。セットプレーが続いた78分の場面では、セサル・アスピリクエタが必死に競りにいかなければ、ラウール・ガルシアはヘディングを枠内に飛ばせたかもしれない。チェルシーの右SBは、その後も3度、クリアはできなくとも諦めずにプレスをかけて、敵のヘディングの照準を狂わせた。

 両サイドでは、ウィリアンとラミレスが左右の第2SBのように相手選手とスペースをカバー。インサイドでは、繰り返しクロスを頭で跳ね返し、体を張ってシュートをブロックしたミケルの存在がとりわけ防波堤の強度を高めていた。ホームで先手をとっておきたかったアトレティコが、終盤にホセ・エルネスト・ソサとダビド・ビジャを加えて攻撃を強めても、ゴールを割られそうな気配はなかった。

チェルシーの得点機もほとんどなかった。

 そしてチェルシーにゴールが生まれそうな気配は、更に乏しかった。アトレティコのゴールを守るのは、チェルシーからレンタル移籍中のティボウ・クルトワ。対戦前には契約の絡みで出場の可否が注目されたが、いざ先発起用されてみれば、ランパードのボレーを正面でキャッチした他は、ほとんど仕事をする必要がなかった。

「心のクラブ」でもある古巣のピッチで本領発揮が期待されたトーレスも、ペナルティエリア内で軽快なフットワークを見せながら、肝心のシュートが勢いを欠いた59分のシーンが最大の見せ場だった。

【次ページ】 スコアレスドローと、負傷者続出の“収支”は?

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