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アトレティコのホームで納得の0-0。
専守防衛のチェルシーが得た“優位”。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2014/04/23 12:10

アトレティコのホームで納得の0-0。専守防衛のチェルシーが得た“優位”。<Number Web> photograph by AFLO

アウェーでの1stレグをスコアレスドローで終え、達成感をあらわにするチェルシーのランパード。モウリーニョの復帰1年目の冒険は、CL決勝に辿り着くのだろうか。

スコアレスドローと、負傷者続出の“収支”は?

 だが、チェルシーはそれで良かったのだ。

 初戦では、クルトワを脅かすことよりも、自軍ゴールを脅かされないことが先決だった。孤立覚悟の1トップは、カウンターからゴールを奪えなくとも、反撃に転じて味方に一息つく時間を与える仕事が求められた。不発に終わったと見られそうなトーレスだが、合わせて5本のCKとFKを奪っただけでも及第点は与えられる。

 とはいえ敢えて守勢を選んだ代償はある。ランパードとミケルが警告を受け、2ndレグで出場停止となった。いずれも不慮の事故だが、肩を脱臼したチェフは2ndレグを待たずに今季終了。足首を痛めたテリーも1週間での回復は望み薄だ。

 但しこの「準決勝前半」での堅守ぶりからすれば、「準決勝後半」も負傷者2名の不在を補うことは不可能ではないと見る。MFの出場停止は、主軸のガビを失ったアトレティコの方が痛いとも考えられる。

 本来はカウンターを得意とするアトレティコが相手だけに、ホームでもチェルシーに必要以上の攻勢はないと思われるが、リターンマッチでは攻撃のキーマンであるアザールが先発可能なはず。初戦では、基本システムでトップ下を務めるオスカルも使う機会がなかった。

モウリーニョのチェルシーが優位で2ndレグに臨む。

 実は1stレグでのスコアレスドローは、1stレグのホームチームに有利だとする見方もある。2ndレグで1点を奪えば、アウェイゴールとなって精神的優位に立てるからだ。得点力では、チェルシーが今夏に獲得を狙うジエゴ・コスタが、1人でチェルシーのFW3名分以上の得点を上げているアトレティコに分があるとも言える。

 だが、一方のチェルシーも堅守を続けて1点を奪えば決勝に駒を進められるのだ。1stレグで狙い通りの試合運びをされたアトレティコは、只でさえ経験のないCL準決勝で、今季の決勝トーナメントで最もプレッシャーのかかる2ndレグを迎えるはめになった。ACミランとの1回戦は零封勝利、バルセロナとの準々決勝はアウェイゴール付きの引分けと、いずれも初戦で優位に立っていたのだ。

 その点、監督もチームも決勝トーナメント常連のチェルシーは、PSGとの準々決勝で逆転勝利を実現したばかり。1-3で敗れた初戦での借金を、2-0で勝利したリターンマッチで狙い通りに返済した。続く今回のスコアレスドローがプラン通りであったように。指揮官は、2ndレグ3日前の27日に行なわれるリバプールとのリーグ戦での「戦力温存」を試合後に仄めかし、普段以上に入念な準備を経て決戦に臨む構えまでみせている。

「前半」開始前には、僅かながらアトレティコ優位の下馬評だった準決勝。試合巧者である「モウリーニョのチェルシー」は、30日の「後半」を五分五分以上の立場で迎える。

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