野球善哉BACK NUMBER
大型戦力ソフトバンクは“足”で倒せ!
ロッテ・角中勝也の走塁への執念。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNaoya Sanuki
posted2014/04/21 12:00
走塁には自身の走力だけではなく、守備者の能力、絶対に避けなければいけないこと、などあらゆる要素が含まれている。その意識を高く保つことが1つ先の塁、1点につながるのだ。
今年のソフトバンクは、こうやって倒していくしかない。
20日のロッテvs.ソフトバンク戦は、まさにそう思えるような試合だった。
2回裏、5番・角中勝也が遊撃手後方へフラフラっと上がる小飛球を放つ。名手・今宮健太が必死に追い、左翼手・中村晃も懸命にダイブしたが、打球は2人の間にポトリと落ちた。打者走者の角中は、当然のように二塁を陥れていた。
続く6番・クルーズの打球は三塁への痛烈なゴロ、これを三塁手の松田宣浩が後逸。角中が二塁から生還し、先制点を挙げた。ソフトバンク守備陣のミスともいえるプレーで、ロッテが試合の主導権を握ったのだった。
このあとロッテは、4回裏に角中の右翼本塁打で追加点。5回裏には根元俊一、角中の適時打でさらに2点を追加。投げても、先発の石川歩がルーキーとは思えぬ堂々としたマウンドさばきで8回を無失点。ロッテは今季6戦目にして、4-0で初めてソフトバンクから勝利を挙げた。
角中の“走塁力”、侮れない。
一見、相手のミスにつけ込んで勝利したかのように書いたが、それは今回のコラムの趣旨ではない。
凡打といえる打球でも走塁スピードを緩めず、二塁を陥れた角中の走塁。
それこそが豪華メンバーのソフトバンクに勝つ方法とみたのだ。
「このままソフトバンクに負け続けて苦手意識を持つのも嫌だし、勝てて安心しました。石川がよく投げてくれて、相手のミスからの先制でしたけど、うちはこういう勝ち方をしていくしかない」
伊東勤監督は、試合をそう振り返った。
ミスにつけ込んだことを挙げつつ、ルーキーの石川を称えたが、「こういう勝ち方」の要素の一つに、角中の走塁があったことを忘れてはいけない。
「普通っす、特に、どうっていう走塁ではないです。誰でもいくでしょ」
角中は2回裏の二塁を陥れた場面をそう説明したが、この男の“走塁力”、決して侮れない。
実は角中は、走塁面においても首脳陣からの評価が高いのだ。