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大型戦力ソフトバンクは“足”で倒せ!
ロッテ・角中勝也の走塁への執念。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byNaoya Sanuki

posted2014/04/21 12:00

大型戦力ソフトバンクは“足”で倒せ!ロッテ・角中勝也の走塁への執念。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

走塁には自身の走力だけではなく、守備者の能力、絶対に避けなければいけないこと、などあらゆる要素が含まれている。その意識を高く保つことが1つ先の塁、1点につながるのだ。

落合博満、中村剛也など意外な走塁名手の系譜。

 外野守備走塁コーチの清水雅治はいう。

「角中の走塁意識は、打撃に対する取り組みと変わらないくらい高いんです。走塁には足が速いからできるものと、意識で変わるものがあります。例えば、現役時代の落合(博満)さんは、俊足ではありませんでしたが、走塁の意識が高い選手でした。西武のおかわり(中村剛也)なんかもそうです。

 一見速くは見えませんが、好走塁ができる。角中はウチのチームの中で、それができる選手です。盗塁のサインを出されてから走る選手ではなく、常に準備ができている。自分で走ろうという意識を常に持っているので、サインは出しやすいですよね」

二塁からタッチアップでホームへ還るスーパープレー。

 角中について、昨季の好走塁で思い起こされるシーンがある。

 1死満塁の場面で二塁走者からホームに生還した9月14日の西武戦のプレーだ。

 5-3の7回表、1死満塁から鈴木大地が中堅深くに大飛球を放つも、西武の中堅手・秋山翔吾が好捕。通常なら、三塁走者が生還、二塁走者が三塁へ到達するというのが予測される結果だが、二塁走者だった角中が、なんと二塁から本塁へと還ってきたのだ。

 当時を回想する角中の言葉が実に興味深い。

「あのシーンでは、西武の外野陣が前に来ていたので、打球が外野の頭を越えたらホームに還れるという判断が自分の中ではできていました。だから、タッチアップの準備をしていたんですけど、それに加えて、西武の中堅手は秋山なので、彼の守備力なら捕るだろうと思っていましたね。

 あの場面で一番避けないといけないのは、打球が外野の頭を越えたのに、ホームに還れないこと。それが1番最悪なので、それだけ避けようって考えた時に、あの打球が野手の頭を越えてからでも、ホームに生還できるという判断ができたからできたタッチアップでした」

 得点差、相手の守備位置、相手の守備力を頭に入れての状況判断、それに至る準備がいかにできているか。角中の走塁への取り組みの高さが理解できるといえる。

 とはいえこうした走塁は、その場面に遭遇したときにとっさにできるプレーではない。日ごろから走塁意識を高く持っているかどうかで変わってくるものだ。清水コーチも「コーチとしては、ああいう走塁ができるチームにするのが理想。でもあのプレーは、三塁コーチャーの僕がまわれとどれだけ指示したとしても、本人に走塁への高い意識がなければ、できないプレーなんです。角中にはそれがあったから、あんなスーパープレーができた」と角中の“走塁力”に賛辞を惜しまない。

【次ページ】 角中が一塁走者の時の、ある驚異的なデータ。

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